医学界新聞

 

国際保健協力――何が大切か?

スマナ・バルア氏(フェローシップ指導専門家・国際医療福祉大)に聞く


苦労して自分の道をつくる

―――「どうしたら国際保健の仕事につけるのか」という質問を医学生からよく受けます。
バルア 国際保健に関心を持つ医学生は増えています。しかし,実際に国際保健の現場で働く人たちと,気軽に話すチャンスはいまも乏しいのが現状です。時間的な余裕のある学生のうちに,国際保健に従事する方たちとできるだけ多くの接点を持ち,自分がやりたいことは何か,それを実現方法は何かを見出す努力が必要です。
―――具体的には?
バルア 「国際保健協力フィールドワーク・フェローシップ」だけでなく,NGOなどが主催するスタディ・ツアーなど,国際協力現場を訪れるツアー企画に参加するのもよし,国内で毎年開催されている「国際協力フェスティバル」(本年は10月7-8日に日比谷公園で行なわれた)などに参加してみるのもよい。NGOのネットワークであるJANIC(NGO活動推進センター)のセミナーに参加してみるのもよいかもしれません。
 GO(政府系機関)もNGO(非政府系機関)も,人材の採用には「経験」を重視します。その「経験」を得るためにも,積極的に情報を収集し,貪欲に学習・体験する機会を得る努力が必要です。「苦労して自分の道をつくる」これが大切です。

まず,人間と社会を知れ

―――国際保健に取り組もうとする医学生に,何を一番訴えたいですか?
バルア 国際保健協力の現場では「医師」や「看護婦」の専門性が必要とされていないこともあります。むしろ,「食前にはしっかり手を洗いましょう」とお母さんに粘り強く教えるような地味な取り組みが重要なケースが多いのです。現場を知ること,そして現地の人々と接し,文化・習慣を学ぶことが大切です。
 故中川米造先生(阪大名誉教授)は,「人間のこと,社会のことを知らずに医者になっていいのか」と訴え,社会学的な教育の重要性を強調しました。私は「人間として人間の世話をすること」を学び,「世間や世界を知る」ためにも,医師になる前に「旅をする」ことは大きな意味があると思います。そして,それは自分自身のアイデンテティを問うことにもつながります。
1)Who am I ?
2)Where did I come from ?
3)How did I come here ?
4)Where shall I go from here ?
5)How shall I go there ?
6)What shall I do there ?
このことを問いつづけることが大切です。