医学界新聞

 

「骨と関節の10年」を提唱

――日本整形外科学会記者会見より


 さる9月7日,東京・千代田区のKKRホテル東京において,日本整形外科学会(理事長=東大名誉教授 黒川高秀氏)の主催による記者説明会が行なわれ,本(2000)年から2010年の10年間を「骨と関節の10年」とし,国際的なキャンペーンが行なわれることが発表された。
 「骨と関節の10年」は,(1)筋骨格系障害が社会の負担として増大しつつあることへの認識を喚起する,(2)患者にケアに参加できる力を与える,(3)経済効率のよい予防と治療を推進する,(4)予防と治療を改善するための研究を通して筋骨格系障害に対する理解を進歩させる,の4点を目標に,日本国内では,筋骨格系障害の実態と費用を調査・公開するなどの独自活動が進められる。なお,日本整形外科学会では,1994年より10月8日を「骨と関節の日」と定めており,特に「骨と関節の10年」最初の年である本年10月を「骨と関節の月間」とし,各都道府県の整形外科関連団体による講演会や座談会,医療相談などを各地で開催している。

骨折治療の最前線;BMP

 また同席上では,「骨折」をテーマに高岡邦夫氏(信州大)が「骨折治療の最前線」と題して口演。同氏は,新しい革命的な骨折治療法の1つとして,BMP(Bone Morphogenetic Protein;骨形成蛋白)を用いた方法を紹介し,その画期性について解説した。BMPは正常な骨基質に骨形成を誘導する活性を持つ蛋白分子で,中でも,BMP-2は骨形成促進活性が強く,臨床応用が有望とされ,すでに国際的な臨床治験が進められている。
 高岡氏は,(1)BMPを骨折部に投与することで骨形成反応を人為的に増幅することができれば,骨の再生能力を高められ,骨形成に要する時間を短縮できる,(2)人工生体材料・BMP・担体の3者を複合して用いれば,自家骨移植が不要となるし,大きな骨の欠損部も修復できる,(3)内視鏡やコンピュータナビゲーションシステムなどを利用すれば,大手術をすることなく,脊椎固定を行なうことができるなどの可能性をあげ,「21世紀には,BMPの臨床応用が期待され,コンピュータ画像技術などの発展とも相俟って,患者にとって苦痛が少なく,安全で確実な骨折治療が実現するだろう」と結んだ。
 これに対し,黒川氏は「整形外科医療が,関節の骨折や靱帯,軟骨までも視野に入れた緻密な専門医療に発展すると同時に,BMPという驚くべき新しい技術が開発されつつある。高齢化に伴った国民病とも言える骨と関節の衰えに対抗して,個人の自立と尊厳,QOLの維持という視点に立った整形外科医療が可能になるだろう」と新世紀の整形外科医療に期待を寄せた。