医学界新聞

 

21世紀に向けた難病対策の総合施策の推進

第5回日本難病看護学会が開催される


 さる8月18-19日の両日,第5回日本難病看護学会が,西三郎会長(東海大教授)のもと,東京・三鷹市の三鷹市公会堂で開催された。

市民とともに探る難病対策

 「21世紀に向けた難病対策の総合施策の推進」をメインテーマに掲げた今学会では,会長講演「21世紀に向けた難病行政のあり方」や特別講演「難病と遺伝-遺伝情報をめぐる諸問題」(山梨医大 山縣然太朗氏)をはじめ,療養者からの発言としてALS(筋萎縮側索硬化症)患者である塚田宏氏(日本ALS協会東京都支部長)が,「神経難病(ALS)とともに生きて」を講演(代読=聖路加看護大大学院 谷口珠美氏)。塚田氏は,18年に及ぶ進行性難病との闘いとつき合い方,家族愛,また13年間の入院経験から,医療者への批判や希望すること,ボランティアの必要性などを淡々とした文章をもって参加者に伝えた。
 またシンポジウムは,I「難病看護技術の基準化」(座長=都立保健大 尾崎章子氏,都神経研 小倉朗子氏),II「難病の人々を支える地域ぐるみの三鷹市ケアシステム」(座長=群大 牛込三和子氏,三鷹市医師会 谷口亮一氏)の2題を企画。後者では,1980年から難病検診を始めた三鷹市の地域ケアシステムが紹介された。このうち「療養者からの発言」および「シンポジウム II」は,市民に一般公開された。

難病看護技術の基準化に向けて

 シンポジウム I「難病看護技術の基準化」は,「自宅において医療行為を必要とする療養者が急増しているが,安全な在宅療法を支援するためには,看護職の判断法や技術手順などを基準化することも重要」との観点から企画された(写真)。
 福永愛子氏(愛知県稲沢保健所)は,「療養者と家族のニーズに沿った,効果的な支援に向けた調整が保健所保健婦の役割」としてその取り組みを紹介。ルーチンワークとなった援助プロセスを概説するとともに,介護保険の実施に伴う課題として,「難病療養者の援助経験がない関係者への知識と技術の普及」をあげ,支援システムの構築,地域ケアサービスの基準化,情報交換の必要性を説いた。
 鈴木珠水氏(東医歯大病院)は,個別性を重視した「病棟における看護技術の標準化と在宅自己導尿看護プロトコール」を発表。本プロトコールの実際を述べるとともに,その有用性を検証した。
 本田彰子氏(わかば訪問看護センター)は,52歳の脊髄神経難病患者の事例を通し,訪問看護ステーションにおける看護技術の基準化や課題に触れ,看護職には「調整能力と指導能力が必要」と述べた。
 川村佐和子氏(都立保健科学大)は,「在宅療養者に対する看護サービスの基準化」と題した口演の中で,1992年に行なわれた医療法の改正により,これまでの医療機関・施設に限定されていた医療提供の場が「居宅等」に拡大されたことを指摘。しかしそれは同時に,必要なサービスを選択し,そのサービスを利用して自己を実現することが,医療を受ける側の責務となったことを論じた。その上で氏は,「医療水準,看護水準,学問水準を満たす」準基準書作成のプロセスについて解説を加えた。