医学界新聞

 

第45回日本透析医学会学術集会開催


 さる6月16-18日の3日間にわたり,福岡のアクロス福岡他5会場で,藤見惺会長(福岡赤十字病院副院長)のもと,第45回日本透析医学会学術集会が開催された。本学会では,会長講演,特別講演をはじめ,招請講演,シンポジウム,パネルディスカッション,など多数の演題が企画されたが,今回は「東南アジアへの窓口」とも言える福岡の開催ということから,近隣アジア諸国から腎・透析関係のリーダーを招いた国際シンポジウムなどユニークな催しも行なわれた。


 会長講演を行なった藤見氏は,1970年代以降の自身の取り組みを振り返り,「私たちが治療効果と考えている多くの部分は患者自身の努力でなされている」,「透析医療の良し悪しは患者が判断するものであり,その基準は患者の満足度にある」との考えを述べた。さらに,「透析医療は非常に長期にわたるターミナルケア」と捉える藤見氏は,身体的苦痛,精神的苦痛,社会的苦痛のみならず,霊的苦痛を含めた「トータルケア」の重要性を指摘し,「全人的医療としての透析医療」という本会のメインテーマの示す意味を訴えかけ,参加者に深い感銘を与えた。

パネル「透析医療経済の今後」

 一方,最終日の午前中に行なわれ,多数の参加者を集めたパネルディスカッション「透析医療経済の今後」(司会=日鋼記念病院 大平整爾氏,東葛クリニック 鈴木満氏)では,まず,司会の大平氏が「医療の質と経済性」という2つの視点を強調したのを受け,パネリストからは,透析医療経済について最新の話題が提供された。
 日台英雄氏(横浜第一病院)は「透析医療の国際比較」を口演。特に英仏日米先進4か国における透析医療費について費用効果分析などの検討を行なった。その中で氏は,「本邦の透析人口は急増したものの,技術料とダイアライザー価格の引き下げにより透析医療費の総医療費に占める割合は低下している。しかし,今後も透析医療費増大への対応は必要」との見解を示しつつ,そのための手段としてのダイアライザーの再利用については,「合併症の増加,死亡率の増加(3%)」などが懸念されることに加え,再利用に伴う新たなコストの発生を指摘し,「問題点が多い」と述べた。
 続いて登壇した内藤秀宗氏(甲南病院)は「病院経営の現状と今後の経営動向」を解説。日本の透析医療の特徴について,(1)民間医療への高依存,(2)患者増(8,000-10,000人/年),(3)施設血液透析中心,などを指摘。経営戦略として,在宅医療(CAPD)によるグループ化の構築を行ない,「労働負荷の軽減」と「Risk Hugging」を行なうことの必要性を示唆した。
 「透析医療におけるDRG/PPS」を口演した高橋進氏は1998年11月より国立病院等10施設で試行が開始されているDRG/PPSの腎臓内科分野における実態調査成績を報告したが,その慢性腎不全の分野への導入への慎重な構えを見せた。また,桜堂渉氏(バクスター)は,「平均在院日数の短縮と医療機関の行動選択」を口演する中で,「多くの医療機関が在院日数の短縮化そのものを目的化する状況」が生み出されていると指摘。本来,「医療機関がおかれている市場の需要特性と個別医療機関の機能特性によって適正な在院日数が決定されるべきだ」と述べた。
 本シンポジウムでは,さらに,「日本透析医会による透析医療費実施調査」の報告(同医会透析医療調査分析作業部会 鈴木満氏)が行なわれた他,大平氏が「透析医療経済におけるブラッドアクセス(BA)」を口演。BAの作製・修復に直接関連する医療費が年間血液透析医療費の約10%に相当することなどを指摘し,医療技術面のみならず,経済面からもBAの重要性を強調した。