医学界新聞

 

ホスピスケア・緩和ケアの現状と展望を語る

第5回日本緩和医療学会が開催される


 さる6月2-3日の両日,第5回日本緩和医療学会が,小川道雄会長(熊本大)のもと,熊本市の熊本県立劇場で開催された。同学会は,「癌の発生,進展からその診断,治療,さらにターミナルケアまで」をテーマとした「Cancer Week in Kumamoto 2000」(第9回日本癌病態治療研究会,第59回九州癌学会,第40回日本肺癌学会九州地方会と共催)の一環として位置づけられ,癌をめぐる最新の進歩,英知を学ぶ合同集会の形式で行なわれた。

一般病棟における緩和ケアから地域における緩和ケアまで

 同学会では,理事長講演「21世紀の緩和医療」(阪大 柏木哲夫氏)や会長講演「進行・末期癌患者に対する緩和手術の現状」(小川氏)をはじめ,「乳癌の乳房温存療法は,患者のQOLを満たす究極の治療法と言えるのかを再考しなければならないだろう」と問題提起した「乳癌-理想の治療を求めて」(愛知県がんセンター 三浦重人氏)など,教育講演が3題。また,シンポジウム「ホスピスケア・緩和ケアの現状と展望」(司会=京府医大 近藤元治氏,国立がんセンター東病院 志真泰夫氏)の他,「癌治療におけるインフォームドコンセント」(司会=山王病院 水口公信氏,東札幌病院 手島恵氏),「一般病棟における緩和ケア」(司会=昭和大豊洲病院 栗原稔氏,淀川キリスト教病院 恒藤暁氏),地域性を生かした「九州地区における緩和医療の現状」(司会=久留米大 早渕尚文氏,熊本市民病院 岳中耐夫氏)など8題のワークショップが企画された。
 一方,Cancer Weekの特別講演として,(1)僕の失敗-ターミナルの場面で(鳥取赤十字病院 徳永進氏),(2)「いのちの物語」を創る医療(ノンフィクション作家 柳田邦男氏),(3)「がん」をこえて(北里大名誉教授 立川昭二氏)の3題が行なわれた他,市民公開講座が「がんを防ぐ・がんと生きる」をテーマに開催された。

チーム,システム,教育の視点から

 1992年に第1回若月賞を受賞している徳永氏は,特別講演の中で自らの癌宣告の場における失敗談として,「欧米にはない,日本人の豊かな曖昧さにより,患者は『否認・受容のプロセス』を踏襲しなかったため,教科書通りに告知が進まなかった」と語った。また,告知する時に重要となるのが「音量,音質,音程,間と表情によるコミュニケーション」と述べた。
 一方,シンポジウム「ホスピスケア・緩和ケアの現状と展望」では,6人のシンポジストが登壇(写真)。下山直人氏(国立がんセンター中央病院)が緩和医療チームの現状と展望について,庄司進一氏(筑波大)は臨床人間学の実践を報告。また,佐藤哲観氏(弘前大)は緩和医学教育を,高宮有介氏(昭和大)と月山淑氏は,大学病院での緩和ケアチームと病棟運営について,さらに瀬戸山修氏(東札幌病院)は,経済的評価の視点から,それぞれの問題点と今後の展望を語った。