医学界新聞

 

第50回日本病院学会開催

「21世紀の展望-病院像の曙光を探る」


 さる6月15-16日,第50回日本病院学会が,林雅人会長(平鹿総合病院長)のもと秋田市の秋田県民会館,他で開催された。今学会のメインテーマは「21世紀の展望-病院像の曙光を探る」。
 学会では「農村における地域中核病院をめざして」と題した会長講演に加えて,中山耕作氏(日本病院会長),西澤潤一氏(岩手県立大),矢義雄氏(国立国際医療センター)らによる特別講演が用意された。さらにシンポジウム(1)「住民からみた21世紀の病院像」(2)「21世紀の病院かくあるべし-世界標準の病院運営とは」(3)「病院医療の質の向上をめざして」(4)「中小病院の経営戦略」(5)「感染症対策の現状と将来展望」や,一般演題,要望演題などが企画され,活発な議論が展開された。また学会2日目には緊急報告「平成12年度診療報酬改定影響度・経営実態の現状と今後の展開」(座長=医療法人愛人会理事長 中後勝氏)と題した調査結果が報告された。

世界標準の病院経営とは

 シンポジウム(1)(座長=東北大 濃沼信夫氏)では,濃沼氏が21世紀の病院を考えるキーワードとして「世界標準(global standard)」をあげ,シンポジウムの論点に「世界の潮流に乗り遅れたのはなぜか」「最優先に何をすべきか」「10年後の病院は(規制緩和,競争原理,情報公開など)」の3点を示し,論議を方向づけた。
 それを受ける形で須磨久善氏(葉山ハートセンター院長)と亀田信介氏(亀田総合病院長)が,自らが実践する新しい病院のあり方を提示。須磨氏は長いと指摘される入院日数の短縮をめざして,a.日帰り手術,b.新たな低侵襲心臓手術(MIDCAB,バチスタ・ドール手術)を積極的に施行。a.は1年間の総手術数の1/4を占めるが,患者の満足度を調査したところ,85%と高い満足度を得たことを報告。さらに日本の医療の問題点として「病院の居心地が悪い(患者,職員とも)」「医療効率の向上させるシステムが未発達」「医師を志す原点が曖昧」の3点を指摘し,今後の課題とした。一方,亀田氏は,病院内に限らず,患者や地域全体を視野においた新しい医療情報ネットワーク作りとサービス提供のあり方を模索。統合医療情報システム「ナビゲーション・ケアマップ・システム」を活用した患者への情報開示や,院内LAN環境を利用した「ポイント・オブ・ケア」システムについて解説。さらにEPR/ASP(Electronic Patient Record/Application Service Provider)を用いて,病院,地域の診療所,患者宅などを結び,医療情報の共有と質の高い診療プロセスの開発を検討中であることを明らかにした。
 また,行政の立場から梅田勝氏(厚生省保険局医療課)が,平成12年度診療報酬改定の特色として,入院環境料,看護料などを統合一本化した「入院基本料」の創設や,「外来管理加算料」改定のポイント,手術料の見直しがなされた背景を説明。梅田氏は「この改定の中で,『今後,病院の機能はどうあるべきか』について方向性を示した」と,改定の総括を行なった。

マネジドケアがもたらしたもの

 アメリカの現状に焦点を当てて,グレッグ・メイヤー氏(Gregg L.Mayer & Company)は,米国の医療コンサルタントの立場から口演。慢性疾患患者には,食事や運動など治療以外の行動制限が求められるが,氏は,冊子やインターネットなどを用いて患者や医療従事者に,生活教育や患者指導法などを提供する「Disease Management」と呼ばれる商品について紹介。続いて江口成美氏(日医総研)は,米国の「マネジドケア」の現状に加えて,他国の現状を提示。問題点を提示する一方で,マネジドケアがもたらした「医療業界全体の効率化や質に対する意識の向上,予防医療の重視,医療サービスの科学的評価などが推進された」などの利点を指摘し,日本への導入の可能性を示唆した。