医学界新聞

 

学生よ,いまこそ磨け!
コミュニケーションスキルを

吉見太助(鹿児島生協病院内科・MITファシリテーター)


 現在の研修医はほとんどの場合,基本的臨床能力である,医療面接を中心としたコミュニケーションスキルをトレーニングされないまま,卒後すぐに臨床現場に放り込まれ,患者さんとどうコミュニケーションをとってよいか,四苦八苦しているのが現状です。どうしても初期研修の時期は各種知識・技術の習得に重点が置かれてしまいます。したがって患者の気持ちに近い,医師の立場に凝り固まっていない時期である卒前に,医療面接を中心とするコミュニケーション技法のトレーニングを受けることが大切だと思います。

臨場感あるシミュレーションでアートを学ぶ

 第1回MITに参加する前には,率直に言って医療面接のうち正確な情報収集・鑑別診断を進めるという側面(サイエンス)に偏りやすいのではないか,もう一方の側面である,患者さんと信頼関係を築きながら診療を進めていく側面(アート)が弱くなるのではないかと危惧していました。
 鑑別疾患を思い浮かべながら,鍵となる症状など正確な情報をもれなく聞き出し,緊急度・重症度・頻度などに基づき鑑別診断を進めていくという実際の診療を,よく練られたシナリオとSPを使って,臨場感・緊張感を持ってシミュレーションしたことは,学生のサイエンスの能力を高めたいというニーズに応え,学習意欲を高め,アートの能力も十分学べたようです。