医学界新聞

 

第35回日本理学療法士学会 開催


 さる5月19-20日,日本理学療法士学会が,内匠正武会長(菊地病院)のもと,鹿児島市の鹿児島市民文化ホールにおいて開催された。本学会のテーマは「理学療法の効果判定」。
 学会では,学会長による基調講演,田中信行氏(鹿児島大)による特別講演,イブニングセミナー,主題発表などが行なわれた。なお本学会は,次回開催(第36回)から「日本理学療法学術大会」と学会名を変更することが決定した。

理学療法の効果判定

 シンポジウム「理学療法の効果判定」(司会=信州大医療短大 藤原孝之氏,写真)では,成人中枢神経疾患領域について吉尾雅春氏(札幌医大)が,中枢神経系の理学療法効果を検討。「個々の臨床における根拠のある検討を詳細に行ない,客観的記録を残し,用語,尺度,基準を統一し,多種・多施設共同研究を施行して,標準的な効果を示さなくてはいけない」と提言した。続いて彦田龍兵氏(南大阪療育園)は,小児中枢神経疾患領域について,痙直型四肢麻痺児の運動機能獲得に関する10年間の考察から評価法を模索。氏は「医療側からの評価に加えて,利用者のニーズを考慮し,最終的には患者の満足度によって評価することが重要」とした。
 骨・関節疾患領域について岡西哲夫氏(藤田保衛大リハ専門学校)は,関節可動域(ROM)の訓練と筋力増強運動の効果判定を検討。筋肉増強運動には筋電図バイオフィードバック療法および筋疲労感を目安にした反復訓練法が効果的なことを明らかにし,「理学療法の効果判定は治療内容ばかりでなく,その疾患に対する帰結の予測に関する研究の中に組みこまれるべき」と示唆した。次いで物理療法領域についてGoh Ah Cheng氏(信州大医療短大)は,「物理療法に根拠があるか」を検討すべく,MEDLINEとCINAHLで文献検索を施行。超音波療法など一般的な物理療法に関する多施設共同試験を行なった文献がほとんど存在しないことを明らかにした。その上で氏は,物理療法におけるエビデンス・ベースド・プラクティスの確立をめざして,ホームページを立ち上げ,種々のデータを集積しはじめたことを報告した。
 呼吸,循環,代謝,高齢者(低体力)などを対象とする内部障害系理学療法の分野については丸山仁司氏(国際医療福祉大)が解説。「内部障害研究会」における活動を紹介するとともに,各疾患領域における現状を報告した。一方,大峯三郎氏(産業医大)は,生活環境支援系領域から「脳卒中後片麻痺患者の外来通院での理学療法の効果」を検討。片麻痺患者の外来通院継続群と非継続群とに分け,Brunstraom scale,日本語版Apathy scale,歩行速度,PCI(歩行効率指数)などを経時的に評価し,理学療法の有効性と効果判定における妥当性を示した。演者による口演終了後,指定発言として黒川幸夫氏(理学療法効果検討委員会委員長)が,1999年に設置された「理学療法効果検討委員会」の活動報告を行なった。当面の活動として,(1)CVA効果検討班,(2)保健福祉分野効果判定班,(3)専門領域研究部会の3委員会を設置し,今後各委員会ごとに検討を行なっていくことを明らかにした。