医学界新聞

 

日本ロービジョン学会設立に際して

高橋 広(柳川リハビリテーション病院・眼科)


 日本ロービジョン学会が,本年4月9日に,京都市の京都国際会館で行なわれた同学会設立総会を経て発足した。日本における,本格的な視覚リハビリテーション(ロービジョンケア)の開始である。
 本設立総会には全国から約500名が参集。田淵昭雄氏(川崎医大教授)を初代理事長に選出し,同理事長は高らかに学会発足を宣言した。続いて,第1回学術総会に移り,丸尾敏夫氏(帝京大教授)の格調高い基調講演の他,招待講演「Rehabilitation of the Visually Impaired Patient」(ハーバード大教授 Jerome A. Catalino氏)では,視覚リハビリテーションの必要性が述べられた。

視覚障害者の苦悩解消のために

 わが国における眼科リハビリテーションは30年前に遡ることができる。丸尾氏が基調講演「ロービジョンへの眼科医の対応」でも述べられたが,眼科リハビリテーションは地域差が大きく,また既設の地域でも十分にその機能が働かず,視覚障害者の苦悩の日々が続いているのが現実である。
 このような状況下において,日本眼科学会や日本視能訓練士協会の全面的なバックアップを得て,本学会の設立が準備されてきた。実地医療の場で早期にロービジョンケアを開始し,教育・福祉・保健への連携の必要性を医療側が強く意思表示したものである。
 本学会は,「視覚に障害を有する児・者のリハビリテーション,およびリハビリテーションに関する学際的な研究および臨床の向上と,会員および諸外国との交流」を目的に設立。また,会員は「この目的に賛同する者」とし,その資格を問うておらず,広く人材を求めているところに本学会の特徴がある。このことが学会発展の原動力になると確信している。
 なお,学術総会午後のワークショップ「21世紀へのロービジョンケア」では,4人の演者が登壇。乳幼児から高齢者まで,年齢層ごとにその特徴が解説され,医療だけでは決して問題は解決しないこと,多職種によるチームアプローチが重要であることなどが述べられた。一方で,13の学術展示の他,眼科医療以外にも福祉やデザイン関係者からの演題もあり活発な討論がなされた。
 また,次回第2回ロービジョン学会(会長=高橋広)は明年4月22日に,横浜市で開催する。期待の大きい学会であるが,医師・看護職等の医療職は無論のこと,医療関係者以外の,特に教育や福祉関係者からのさらなる参加が今後の学会発展の鍵になると思われる。ぜひの参加を期待したい。