医学界新聞

 

第100回日本外科学会が開催される

「Act Now for the Future――未来のための今」


 さる4月12-14日の3日間,第100回を迎えた日本外科学会学術集会が,北島政樹会長(慶大)のもと,東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて,過去最高の1万3700人を超える参加者を集めて開催された。今回のメインテーマは,「Act Now for the Future――未来のための今」。
 今学会では,鳥居泰彦氏(慶大塾長)による特別記念講演に加えて,外科の世界的権威が一堂に会し,20世紀の外科学を振り返るCentennial Symposium「外科学――新たなる夜明け」や,がん低侵襲手術「Sentinel Node Navigation Surgery」などの特別企画の他,アンサーパッドを用いて参加者全員が討論に参加できるコンセンサスミーティングや教育セッション,シンポジウムなど多彩なプログラムが企画された。
 さらに,北島会長による講演「未来のための今」では,氏の外科医としての研究の歴史を振り返りながら,外科学における基礎医学の重要性や,医学と工学の融合による新たな展開などを話題の主軸に,21世紀の外科学の方向性を模索した。


外科学会第100回記念式典・講演

 また本学会の前日には,日本外科学会第100回総会記念式典および記念講演が開催された。式典は皇太子・皇太子妃ご臨席のもと,皇太子をはじめ国内外からの来賓による祝辞が寄せられた。また式典の結びには,小森昭宏氏(慶大医学部出身の作曲家)の作曲・指揮による記念演奏「式典序曲」が披露された。さらに式典の後,日本人初の女性宇宙飛行士であり,慶大出身で心臓血管外科医の経験を持つ向井千秋氏による記念講演「宇宙が仕事場」が行なわれた。

ライブデモ「Robotic Surgeryと遠隔手術指導」

 特別企画「ライブデモ-Robotic Surgeryと遠隔手術指導」(写真,司会=慶大 斎藤信男氏,大分医大 北野正剛氏)は,学会場である東京国際フォーラムと慶大,ニューヨークのマウントサイナイ医療センター,川崎市立川崎病院(以下,川崎病院)の4個所を結んだ4元中継のもとに行なわれた。学会場では山川達郎氏(帝京大溝口病院)と大上正裕氏(慶大)が登壇し,またJeffrey Milson氏とMichel Gagner氏(マウントサイナイ医療センター)は,画像を通して議論に参加した。

Robotic Surgery
 最初に慶大からの中継で,手術用ロボット「da Vinci」(Surgical Intuitive社製,2379号参照)を用いた逆流性食道炎の49歳男性に対するNissen手術が披露された。自身も手術用ロボット「ゼウス」の使用経験を持つGagner氏は,「ロボット手術は4年前から利用され,困難な手術をサポートしてくれる。しかし現在はその適応を探っている段階で,今後は臨床試験が必要」とロボット手術の現状を紹介した。
 続いて若林剛氏(慶大)は,da Vinciを用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術を,ビデオを用いて紹介。本法のメリットとデメリットを示し,一般外科での適応には,癒着のひどい症例や難易度の高い症例があげられると述べた。最後に司会の斎藤氏は「このような手術用ロボットに,ヴァーチャルリアリティや,触覚のフィードバックを組み合わせることで,実際の外科手術だけに限らず,新しい手術教育用の教材ができる」と,今後の可能性を述べた。

遠隔手術指導
 続く川崎病院からの中継では,大腸ポリープの58歳男性への腹腔鏡下大腸切除手術が行なわれた。その際に慶大に待機する渡邉昌彦氏(慶大)が,ISDN回線を用いて映像や音声が伝送される,テレビ会議システムを通して川崎病院に遠隔手術指導にあたる様子が披露された。さらに,共有する画面上にリアルタイムでさまざまな色の線や矢印を書き出すことが可能な「双方向対話システム」を用いて指導が進められた。渡邉氏は「場所が離れていても,手術の指導には問題ない」と述べ,手術医の有澤淑人氏(川崎病院)も「頼もしいツール」と同意。この2つの先端的な手法に,会場の参加者からも大きな期待が寄せられた。