医学界新聞

 

第11回「理学療法ジャーナル賞」の贈呈式が開かれる

入賞は進藤伸一氏,準入賞は山田英司氏,奨励賞は青木詩子氏に


 理学療法士による理学療法士のための雑誌『理学療法ジャーナル』(医学書院発行)主催による第11回「理学療法ジャーナル賞」の入賞・準入賞・奨励賞に下記の3論文が決定。さる2月12日,東京・本郷の学士会分館でその贈呈式が開かれた。
 「理学療法ジャーナル賞」は,『理学療法ジャーナル』誌に掲載された原著論文,依頼論文の中から,毎年1回,同誌の編集委員の選考によって,優秀論文を顕彰するもので,小規模だがユニークな賞として注目されている。
〔入賞〕 進藤伸一氏(秋田大医療短大理学療法科):「障害高齢者に対する10回反復最大負荷での起立運動を用いた筋力トレーニングの効果」(33巻2号,「原著」)
〔準入賞〕 山田英司氏(香川医大附属病院理学療法部)・他:「腰部脊柱管狭窄症例における神経性間欠跛行―歩行様式と歩行可能距離との関係について」(33巻3号,「報告」)
〔奨励賞〕 青木詩子氏(聖マリアンナ医大横浜市西部病院リハビリテーション部)・他:「Pusher現象の重症度,経過によるADL自立度への影響」(33巻11号,「報告」)

 本年は本誌が『理学療法・作業療法』誌から1989年に発展的に分離独立してから11回目の贈呈式となったが,進藤氏は11年前の「準入賞」から,今回は晴れて「入賞」に輝いた。
 進藤氏の受賞論文のテーマは,障害高齢者に対する10回反復最大負荷での起立運動を用いた筋力トレーニングの効果。わが国が超高齢化社会を迎えた今日,高齢者の心身機能を維持することは,ねたきり予防の重要な課題である。「非常にユニークで他の理学療法士も今後,臨床の中で参考にして取り組んでいけるような楽しい研究方法ではないか」と編集委員の間で高い評価を得た。
 一方,山田氏の受賞論文は,腰部脊柱管狭窄症という疾患の特徴である神経性間欠跛行の歩行様式と歩行可能距離との関係を検討し,ADL指導上の指標にする目的でなされた研究。「ともすれば間欠跛行などは,その特性をあまり検討しないで処理してしまう。今回のデータは今後参考になるだろう」と認められた。
 また青木氏の受賞論文は,いわゆるPusher現象に視点を置き,その経過がADLに及ぼす影響を,対象群と併せ44例を対照に4年間にわたって検討した非常に高度な論文との評価を得た。
 贈呈式では編集委員会を代表して吉尾雅春氏(札幌医大保健医療学部)が,賞の選考経過と授賞理由を述べ,「対象症例の中に個別性が随分感じられる。それゆえに,統計処理が少し強引になされているのではないかと感じたところもある。それは対象となった患者さんの抱える様々な問題―年齢・性格・疾患,等々―が背景にあるからだと思う」との指摘もなされた。
 以上の3論文はいずれも,例年のように編集室と著者との間で意見交換を経て修正後に掲載に到った。入賞者の進藤氏は贈呈式でその間の経緯に関して,「投稿すると,一緒に返ってくるコメントが非常に勉強になった」と率直な感想を披瀝。読者・投稿者と編集委員会との間を編集室を窓口として結ぶ双方向性の雑誌作りを指向している同誌の編集方針が結実した結果になった。
 今年も引き続き,本年1年間に本誌に掲載された論文の中から第12回「理学療法ジャーナル賞」の受賞論文が選考される。