医学界新聞

 

第4回日本在宅ケア学会開催


 さる1月29日,東京・千代田区の日本教育会館において,第4回日本在宅ケア学会が開催された。寺山久美子会長(東京都立保健科学大;写真)のもと,「自立支援とリハビリテーション」をテーマに行なわれた今学会では,会長講演「障害者・高齢者の自立支援とリハビリテーション」,特別セミナー「介護保険法とリハビリテーション」(近森病院 石川誠氏),シンポジウム「在宅ケアにおける自立支援のあり方を問う」(司会=茨城県立医療大 大田仁史氏)などを企画。「1970年代に米国で始まったIL(Independent Living)運動の意思を継ぎ,地域リハビリテーションの立場から自立支援に取り組む」(寺山会長)ために,介護保険制度を目前に控えた現在における“新たな在宅自立支援”を模索した。

リハに対する保険

 特別セミナー「介護保険法とリハビリテーション(以下,リハ)」を行なった石川氏は,まず「医療保険で賄われるはずの急性期リハや回復期リハもまだ不十分」とした上で,介護保険の対象となる維持期のリハの標準化に疑問を投げかけた。そして,全国519施設の実態調査より,「リハに携わるスタッフは現在の3-5倍必要」と報告。急性期リハに関しては,なるべくベッドから降りて作業したり,早期からPT・OTをつけるよう提案し,十分なリハ医療サービスの提供を訴えた。また,「訪問リハとは在宅から通所への橋渡し」と語るとともに,「維持期のリハ医療サービスの発展を期待する」と述べた。

在宅自立支援

 シンポジウム「在宅ケアにおける自立支援のあり方を問う」では,在宅ケアに関する(1)サービス資源,(2)具体的な課題,(3)解決方法・将来展望について,5名の演者がディスカッションを行なった。
 (1)に関して,長谷川幹氏(桜新町リハビリテーションクリニック・医師)は「PT・OTだけでなく,在宅ケアに関わる医師も少ない。訪問システムもないのが現状」,窪田静氏(健和会補助器具センター・看護婦)は「ケアマネジャーの教育が大切」,望月彬也氏(東京いきいきらいふ推進センター・PT)は「サービス資源以前に,介護保険制度の実施における要介護認定の調査内容や,介護支援専門員のセンスなどの質の向上が先」,伊藤隆夫氏(たいとう診療所・PT)は「訪問リハは不足。それを訪問看護がカバーしているのが現状」,田辺美樹子氏(練馬区役所・OT)は「質,量,ニーズに対応したサービス調整(マネジメント)が必要」と,それぞれの立場から発表。多くの問題点が浮き彫りとなった。
 また,(3)については,
長谷川氏:地域リハ協議会の設立を強化すべき。また,スタッフ増員,デイサービスとの連携などが必要
窪田氏:リハは専門医療である。地域で,全人的に行なうためには,リハスタッフの交替制導入も必要
望月氏:ハード,ソフトともに環境を整え,介護保険を成功に導く
伊藤氏:当面は訪問看護と連携しながら在宅へ。将来的には厚生省の地域リハ支援センター構想に期待
田辺氏:リハが成功すると,要介護度が下がる。リハ医療への成功報酬がほしい
などの意見が出された。
 また,フロアからは「政府に対して提言できるような学会になるべきだ」との声も上がるなど,リハの観点から見た在宅自立支援には課題の多さが目立つものの,今後の在宅ケアの方向性を示す学会となった。