医学界新聞

 

がん看護-2000年の幕開け

第14回日本がん看護学会が開催される


 さる2月12-13日の両日,第14回日本がん看護学会が,向島怜子会長(大阪府立成人病センター看護部長)のもと,「がん看護-2000年の幕開け」をテーマに,大阪市の大阪国際交流センターで開催された。
 同学会では,小島操子氏(大阪府立看護大学長)による基調講演「21世紀におけるがん看護の役割と責務」や柏木哲夫氏(阪大教授)の教育講演「緩和医療とは」が行なわれた他,シンポジウム「21世紀のがん医療」(座長=千葉大教授 佐藤禮子氏,聖路加国際病院 中村めぐみ氏)が企画。また,一般演題122題の発表が行なわれた。

21世紀のがん看護と緩和医療

 小島氏は基調講演で,21世紀におけるがん看護の役割として,(1)がん予防と早期発見,(2)感性豊かな優れたがん看護実践,(3)患者の自己決定の尊重と権利の擁護,(4)チームアプローチ,(5)がんとともに生きる,(6)在宅がん患者ケア,(7)がん患者家族援助,(8)遺伝相談指導,(9)生命倫理と調和した臨床試験の9項目をあげた。
 なお,(5)に関しては「教育・情緒的サポートが必要」とし,リラクゼーション技術や,西洋医学の領域を超えるものとしての代替相補療法をあげ,家族からの要請があれば前向きに検討する必要性を示唆した。さらに,「欧米ではCNSを上手に活用し,医師が対等な関係でチームを組み,がん医療の発展に貢献した。今後日本のCNSは,日本看護協会,日本看護系大学協議会との連携で加速度的に増える」と予測した。
 教育講演を行なった柏木氏は,WHOのPalliative Careの定義を「がん医療のあらゆる過程に適用される積極的な(active),全人的な(total),QOLを重視した,患者と家族に対するケア」と解説。その上で,「苦痛の緩和に向かうPalliative Medicineは,チームを組んで実現するもの」とし,1996年に設立された「日本緩和医療学会」(会員数約1500名,理事長=柏木氏)は「医師が70%,看護職が20%を占めている」と紹介し,「今後はスピリチュアルケアについても,がん看護学会でぜひ課題に取り上げてほしい」と提言した。

21世紀のがん医療をめぐって

 学会最終プログラムとなったシンポジウムには,治療の側面から豊島久真男氏(住友病院長)が「これからのがん治療」と題して,予防の側面から大島明氏(大阪府立成人病センター)が「がん予防の展望」を,患者の権利については辻本好子氏(ささえあい医療人権センターCOML)が「がん看護への患者の願い」を,看護の立場からは,田村恵子氏(淀川キリスト教病院)が「がん看護の展望」と題して口演した。
 豊島氏は,がん遺伝子やがん抑制遺伝子,診断機器の高度化ががん治療にもたらした効果などを解説。その上で,「21世紀初頭には骨髄移植などの免疫療法や遺伝子療法が進み,個々人に沿った適切な治療が行なわれる。がん患者と長くつきあう看護職は,医学を含めたがんの知識を持っておく必要がある」とまとめた。
 大島氏は,「2015年に,70歳代のがん患者は30%,80歳代でも30%以上となり,高齢がん患者が6割を占めるようになる」と予測し,がん予防対策では特に禁煙対策が重要になることを示唆。医師・看護職の専門団体,学会が積極的に「禁煙支援」をするべきとの提言を行なった。
 また辻本氏は,「医療の専門職の集まりである学会のシンポジストに迎えられ,『患者が主役』の時代になってきたと実感している」と述べ,COMLに寄せられた電話相談を紹介。その上で,「患者・家族には看護職の役割が見えにくい。患者と医師の仲介役ではなく,患者の自立を支援する職(中立者)であってほしい」と訴えた。
 田村氏は,患者・家族のQOLを尊重する視点が重要として,「21世紀に向かって,がん看護はどうあるべきか」を考察した。