医学界新聞

 

第13回日本冠疾患学会が開催される


 昨年(1999年)12月10-11日,本宮武司氏(都立広尾病院,内科系会長)と砂盛誠氏(東医歯大,外科系会長)の両会長のもと,第13回日本冠疾患学会が,東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて開催された。本学会では,海外招請口演,シンポジウム,パネルディスカッションに加え一般演題などが企画され,多数の参加者を集めた。
 弊紙では,2日目に行なわれたシンポジウム「再狭窄サミット'99」を報告する。

再狭窄はどこまで防げるか

 シンポジウム「再狭窄サミット'99(再狭窄はどこまで防げるか-その基礎と臨床)」(司会=大阪市立総合医療センター 土師一夫氏,埼玉県立循環器・呼吸器病センター 堀江俊伸氏)では,インターベンション後の再狭窄について,基礎と臨床の両側面から活発な議論がなされた。
 最初に由谷親夫氏(国立循環器病センター)は「冠インターベンション後再狭窄の病理学的機序」と題して登壇。ステントを入れたまま血管全体を観察できる標本を作成し,ステント後再狭窄例における新生内膜肥厚の原因には,生体反応としての血栓,炎症反応などに加えて「外膜からの締付け」(chronic constriction)も考えられるとし,再狭窄の原因解明には多面的な解析が必要とした。続いて迫村泰成氏(東女医大)は,約320例のDCA(冠動脈内粥腫切除術)切除後組織を解析し,慢性期の再狭窄に関与する小血管増生に注目。血管新生因子である血管内皮増殖因子(VEGF)とその受容体flt-1が同一部位に局在して多数発現した場合に再狭窄病変が示されたことから,小血管増生が再狭窄促進の因子の1つである可能性を示した。また氏は平滑筋増殖には増殖とアポトーシスが同時に起こっていることを明らかにし,「今後は平滑筋細胞の増殖抑制をめざした遺伝子治療や,細胞死促進,小血管増殖抑制などが再狭窄予防戦略として期待される」と述べた。
 成子隆彦氏(大阪市立総合医療センター)は,ステント後の再狭窄には,新生内膜がステント周囲に形成された血栓を基盤に進展することから血栓の関与を重視し,「ステント後の新生内膜形成初期に,GP II b/III a陽性の血小板凝集が高度に認められたことから,GP II b/III a阻害剤による血小板凝集の抑制がステント後再狭窄の予防・治療に有効」と結論した。

臨床的な側面からのアプローチ

 再狭窄に対する薬物療法の視点から代田浩之氏(順大)は,「抗酸化剤は再狭窄を予防できるか?」と題して口演。抗酸化剤プロブコールは,LDLコレステロール低下や接着因子抑制作用があり血管リモデリング抑制に有効なことから,再狭窄予防への効果が示された。氏は本療法のメリットに,(1)コスト安価,(2)経口でも病変への到達可能,(3)抗動脈硬化作用を併せ持つ,などをあげ,一方問題点として(1)効果がマイルド,(2)予防効果が予測できない,(3)薬剤効果の指標がないことなどをあげた。
 続いて相澤忠範氏(心臓血管研)は,IVUS(血管内エコー)ガイド下アテレクトミーの遠隔期成績から,その再狭窄予防効果を検討。DCA6か月後の152病変について血管断面積,残存プラーク面積率,内腔断面積,最小血管内径との関係を解析。氏は,再狭窄の予測因子として残存プラーク率と最小血管内径をあげ,「DCA再狭窄予防にはプラークの十分な切除が有効であり,またDCA後のステントの有効性が示唆された」とした。
 最後に石綿清雄氏(虎の門病院循環器センター)は,再狭窄予防と血管内放射線治療について概説。再狭窄の過程と創傷治癒過程が似ていることから,欧米では1995年に放射線治療の臨床試験が開始されている。氏は,放射線治療により血管障害後の内膜増殖の防止や,血管リモデリング抑制効果が認められたこと,さらにγ線,β線を使用した臨床試験で良好な成績が得られたことから,「再狭窄治療の有望な手段である」と報告。同時に,適応や長期予後など今後クリアすべき問題点を示した。
 すべての口演の後,シンポジストに日野原知明氏(米・セコイア病院)を加えて,議論が進められた。ここでは再狭窄発症のメカニズム,薬物療法における経済効果や,本邦における放射線治療の導入の今後の見通しが示されるなど,再狭窄における最先端の話題が提供された。