医学界新聞

 

第12回日本内視鏡外科学会開催

内視鏡下手術における標準化と適応拡大をめざして


 昨(1999)年12月1-2日の両日,東京・新宿区の京王プラザホテルにおいて,第12回日本内視鏡外科学会が開催された。
 新田澄郎会長(東女医大教授)のもとで行なわれた今学会は,会長講演「胸部疾患における内視鏡手術」をはじめ,招請講演2題,「標準的内視鏡手術手技をめぐって」をテーマにしたシンポジウム4題,「新しい内視鏡外科手技」をテーマにしたパネルディスカッション5題の他,多彩なワークショップや一般演題を企画。また,「第2回伊藤賞」および,「第1回カールストルツ賞」の発表も同時に行なわれ,1900年代の内視鏡外科手術の総まとめにふさわしいプログラムとなった(関連記事)。


胸腔鏡下手術の進歩

 会長講演「胸部疾患における内視鏡手術」では,新田会長が,すでに2万件を超えた胸部疾患に対する内視鏡外科手術について口演。1992年から東京女子医大で取り入れた胸腔鏡手術の成績をもとに,適応に関する考察を述べ,さらに侵襲が軽く患者が受け入れやすい内視鏡外科手術全般に共通する問題点も語った。
 新田会長の教室では,胸腔鏡下手術が開胸手術と同数程度に達しており,氏は「胸腔鏡下手術は,術後肺機能の回復が早く効果的である。高齢者気胸や重篤な下降性縦隔炎の排膿などでも,胸腔内支持が単純な症例には胸腔鏡が非常に有効」と発表。さらに「高齢者には胸腔内操作をなるべく少なくするなど,年齢にあった術式が必要。新しい機器や超音波凝固切開装置,フィブリノーゲン製剤などの開発によって,適応の幅が広がってきた」と,胸腔鏡下手術の進歩を解説するとともに,氏の研究室で行なった5例の肺動脈閉塞下胸腔鏡肺切除症例の手術経過(手術時間4時間,出血量126グラム,在院日数8日)を提示。胸腔鏡下手術の利点を強調した。
 一方,今後の課題として(1)外科医の習熟,(2)侵襲・根治度の評価,(3)手術の省力化,(4)適応の拡大,(5)患者による過大評価などを指摘。外科医のさらなる技能向上に期待を寄せた。
 なお次回(第13回)の本学会は,谷村弘会長(和歌山医大教授)のもと,きたる12月14-15日に,大阪市にて開催される。