医学界新聞

 

天児民和著
『整形外科を育てた人達』について

長谷川 泉(前医学書院社長)   


 天児民和著『整形外科を育てた人達』が出版された。「九州大学医学部整形外科学講座開講90周年記念出版」である。
 小磯良平画伯の「天児民和先生肖像」を巻頭に掲げ,以下,略歴,役職・業績,受章,8頁の黒白アルバム,岩本幸英氏(九州大学教授・整形外科)および小林晶氏(福岡整形外科病院)の「発刊・編集の辞」があり,本題である著者の「整形外科を育てた人達」が続いている。
 これは,Ambroise Pareを始めとして内外の著名な整形外科医132名(追補3名)についての記述であり,日本人としては神中正一・松岡道治・三木威勇治・田代義徳・片山良亮・岩原寅猪・島啓吾・東陽一・羽田正雄・小谷勉・飯野三郎・井上駿一・土屋弘吉・佐藤孝三の各氏があげられている。
 また,巻末に以下のような「骨折治療の近代史」が収められており,選りすぐられた写真・図版が豊富に加えられている。572頁におよぶ大著である。
 (1)Bone-setterから整形外科へ
 (2)ギプス包帯の発明
 (3)金属内副子による骨折の固定
 (4)不錆鋼の開発
 (5)骨折治癒機序

 収録論文のほとんどすべては医学書院が創刊した「臨床整形外科」誌に連載された論文である。したがって,本書編集の任にあたられた小林晶氏が「臨床整形外科」創刊の頃から,天児先生の謦咳に接していた当時の編集担当者である石原隆良氏(現・医学書院出版サービス)に謝意を表しておられる意義を感得することができると思う。
 整形外科を育てた人達の中には,当然,著者である天児民和教授が加わらなければならない。しかし,被写体を撮影する撮影者は,写真に映らないように,著者である天児教授は卓越した人物群像の中に加えられていない。

 本書の編集・発行は九州大学整形外科学教室同窓会,編集協力は医学書院「臨床整形外科」編集室,製作は医学書院出版サービス,発売は医学書院(ISBN4-260-70029-4)。 定価は本体価格が2万円である。

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