医学界新聞

 

17年のあゆみをさらなる発展へ向けて

第1回日本救急看護学会が開催される


 第1回日本救急看護学会が,さる11月26-27日の両日,高橋章子会長(阪大)のもと,大阪・吹田市のオオサカサンパレスにおいて開催された。
 同学会は,昨(1998)年11月に,日本救急医学会看護部会を発展的に解消し,救急看護の学問的な発展,後輩看護職の育成,一般社会に対する救急知識の啓発などを通して救急医療の向上に貢献すること,救急看護職の役割を明確にし,救急看護学の確立を目的として設立。前身である日本救急医学会看護部会は,日本救急医学会の支援のもと1981年に設立されたが,昨年,日本救急医学会が医学研究を主体とした学会に変貌すべく,救急医療面での拡大,充実を日本臨床救急医学会が担うことになったため,部会の独立が課題ともなっていた。一方で,日本看護協会の救急認定看護師が55名に増えるなど部会独自の活動も活発化し,この17年の歴史は3学会へ専門分化する方向に進んだきたとみることもできる。11月現在の会員数は1050名となった。

多方面から救急看護を考える

 記念すべき第1回学会では,会長講演「日本救急看護学会の21世紀に期待するもの」をはじめ,多方面から救急看護を考える企画として,教育講演「救急医療と保険医療」(日医大常任理事 岩崎榮氏),同「われわれはいかにして侵襲に耐えて生き延びているか-サイトカイン入門」(熊本大 小川道雄氏),特別講演「飛鳥が遭遇した異文化-百済と飛鳥」(京都橘女子大 猪熊兼勝氏)の他,パネルディスカッション「災害医療における救急看護の位置づけ」,ワークショップ「救急患者の安全と患者-その1-抑制について」,シンポジウム「救急看護婦の役割拡大の可能性」が行なわれた。また,一般演題発表は118題あった。

トリアージの重要性が指摘される

 災害看護に焦点をあてたパネルディスカッション(写真,司会=福井県立看護短大田中由起子氏)では,青野允氏(金沢大名誉教授,道南森ロイヤルケアセンター)が,「最大多数の被災者に,現有する医療能力で最良の治療を施すこと」を目的とするトリアージの必要性を強調するとともに,「前提として一般市民もトリアージを知っていること,治療は先着順ではないことを周知させるべき」との考えを示した。
 また,榊原弥栄子氏(神戸市立中央市民病院看護部長)は,阪神・淡路大震災時に病棟の1部が倒壊した神戸市立西市民病院に在籍し,救護活動にあたった経験を報告。災害発生時のトリアージの重要性を指摘しし,「災害発生時には,咄嗟の機転と妥協の即応性が必要であり,そのための日常の訓練が重要」と述べた。
 山本あい子氏(兵庫県立看護大)は,災害発生時の救急看護職に期待される役割について考察。生命を救うべく,トリアージの実施,人々を落ちつかせること,資材と場所,人手の調整,調達が看護職の役割とした上で,平常時における体制作り,物品の準備,訓練の重要性を指摘した。
 阿久津功氏(総合会津中央病院)は,昨年12月に濃霧の磐越自動車道で発生した多重衝突事故による多数負傷者収容の経験を報告。トリアージ責任者としての行動から学んだこととして,「正確なトリアージを行なうには,日頃からの施設状況の把握,情報収集が必須」と述べた。
 また,特別発言を行なった太田宗夫氏(千里救命救急センター長)は,「災害医療は医療者の全員参加型の医療であり,組織的行動がなければ効果がない」と指摘する一方,「救急看護職は災害発生時には大切な存在」と述べた。また,今後の学会活動においては,学術的な視野を土台とした国際交流の必要性を説いた。