医学界新聞

 

第22回総合リハビリテーション研究大会開催


 さる10月29-30日,第22回総合リハビリテーション研究大会(主催=日本障害者リハビリテーション協会)が,山下眞臣大会長(同協会会長)のもと,東京・霞ヶ関の全社協灘尾ホールで開催された。メインタイトルは「地域におけるリハビリテーション(以下,リハ)の実践-総合リハを問いなおす」。大会では,半世紀ぶりに行なわれる社会福祉事業法改正から,社会福祉構造改革の方向性について,藤井克徳氏(共同作業所全国連絡会)を司会に,三浦文夫氏(武蔵野女子大)と調一興氏(日本障害者協議会)による対談形式で議論が進められた。その他,地域における先駆的な実践活動のレポートや分科会を企画,今後の課題や展望が浮き彫りにされた。

脳外傷者のリハビリテーション

 パネルディスカッション「脳外傷者のリハ」(司会=横浜市総合リハセンター 伊藤利之氏)では,事故などで頭部に重い外傷を負い,身体麻痺に加え,高次脳機能障害を持つ脳外傷者のリハをとりまく問題を取りあげた。
 最初に,子息が事故で脳外傷となった東川悦子氏(脳外傷の患者会「ナナの会」代表)は,患者会のアンケート調査の結果を報告。また実際に体験した家族の不安・問題点などを語った。
 リハ医の立場からは,大橋正洋氏(神奈川県総合リハセンター)が,脳外傷の病理学的背景やまたそのリハについて概説。「本症の障害像は多様で,身体障害がない場合でも,心理社会的障害が残ることがある」など,その特性を述べた。また氏は医療・福祉における脳外傷者への理解が乏しいことを指摘し,「脳外傷者に対して,既成の医療・福祉サービスでは対応が困難」と,新たな医療・福祉提供体制の必要性を訴えた。一方,作業療法士の立場から比留間ちづ子氏(東女医大)は,「頭部外傷の急性期・回復期における作業療法」と題して口演。「特に効果的なのは,患者ができる具体的な行為・動作の積み重ね」とし,「病院での医療リハに加えて,社会生活維持のための長期的なリハが必要」と強調した。

脳外傷者への認識の乏しさを指摘

 臨床心理士の立場から阿部順子氏(名古屋市総合リハセンター)は,認知・行動障害への対応について概説。患者へのリハ目標を「安定した社会生活を継続すること」として,そのアプローチ法を披露。また氏は今後の課題として,(1)高次脳機能障害の認定,(2)病院から社会生活に移行する訓練の場とスタッフの育成,(3)地域で患者や家族を支えるシステム作りの3点をあげた。
 最後に医療ソーシャルワーカーの立場から生方克之氏(神奈川県総合リハセンター)は,脳外傷患者の相談・情報提供機関の不足や退院後にリハを受けずに医療や福祉からこぼれてしまう患者の存在,障害者福祉関連法や障害認定基準における不利な側面など,社会的リソースの問題点を提示した。
 最後に司会の伊藤氏は,脳外傷者は多様な障害像を持つことから,「脳外傷者のリハには多職種が関与することが望ましい」とし,脳外傷を身体障害ととらえてリハの基盤を作る必要性を提言した。