医学界新聞

 

在院日数短縮がもたらす効果とは

第37回日本病院管理学会開催


 第37回日本病院管理学会が,さる10月14-15日の両日,池上直己会長(慶大)のもと,千葉県浦安市のサンルートプラザ東京で開催された(本紙2363号既報)。
 今学会では,「医療政策の新しい枠組み」をメインテーマに,看護管理,医療経済,高齢者介護,クリティカルパス(以下CP)法など15セッション90題の一般演題(口演)発表をはじめ,医療政策,医療管理など53題のポスター発表が行なわれた。また,2日目の午後からはエール大のDRG(診断関連群)開発メンバーの1人であり,韓国厚生省DRG委員会委員長を務めたYoungsoo Shin氏(ソウル大教授)を招聘し,特別講演「韓国におけるDRGに基づく支払い方式導入の経験」を企画。さらに本講演を踏まえた上でのシンポジウム「診療報酬体系の改革に向けて」(司会=日本福祉大 川渕孝一氏)が開かれた。

望ましい診療報酬体系とは

 同シンポジウムでは,行政から高原亮治氏(前厚生省行政官),医療経済学の立場から安川文朗氏(広島国際大)が,亀田俊忠氏(亀田総合病院理事長)は医療提供者(病院経営者),保険者,消費者を兼ねる立場で,また病院管理学の立場から池田俊策氏(慶大),看護(研究者)の立場からは阿部俊子氏(東医歯大)が登壇し,診療報酬の新しい枠組みや望ましい診療報酬体系はどうあるべきかに関して論じ合われた。
 その中で阿部氏は,診療報酬体系で考えなければいけないこととして,(1)患者の重症度,(2)投入コストとしての原価,(3)治療効果をあげた上で,定額性導入の問題点として「DRGには正確性の高いデータが存在しない」ことを指摘。また,医療ケアの適正と質の指標としてのCPに関して,(1)現在の医療をまとめたもの,(2)バリアンスを用いて指標化し,EBMを取り入れて改善されたCP,(3)バリアンスを用いてシステム改善されたCPの3段階を提示し,日本で導入されているCPの95%は(1)にすぎないこと,アメリカでも(3)までは確立されておらず,確立までに3年はかかると見られることを述べた。
 また,フロアを含めた総合ディスカッションの場では,特に医療サービス(診療報酬)の標準化と原価に関して論議されたが,その内容は(1)診療報酬体系にコスト計算をしても意味がないのではないか,(2)できることからの基盤整備が必要,(3)消費者のニーズは原価では計れないが,原価は明確にしてもよい。付加価値をつけるのは消費者,(4)データを蓄積すれば原価計算はできる,(5)患者は診療報酬を通常考慮しておらず,医療者が考えていること,などであった。

平均在院日数の短縮と経済性

 一般演題発表で濃沼信夫氏(東北大)は,在院日数短縮が病院機能に及ぼす影響について考察。「200床の病院で,現行25日の在院日数を5日短縮したとすると,28床増床したのと同じ影響を受ける」と試算し,全国レベルに換算すると7.2万床の増床に値すると報告。一方,人員配置については,全国の一般病院の在院日数が1日短縮すると仮想ながら医師1458名,看護婦6051名が必要となることを報告した。
 また,田久浩志氏(東邦大)は「平均在院日数の短縮と入院医療費の変化の関係を解析することは重要」とし,その関係を回帰分析で分析。その結果から,平均在院日数が1日短縮すれば入院医療費は1人1日1,063円上昇すると試算し,在院日数の短縮は1病院の年間換算にすると膨大な増収につながることを示唆した。
 さらに,岩本晋氏(山口県立大)は,いわゆる「病院のはしご受診」である重複受診,多重受診は,主治医を持たないことによる医師とのコミュニケーション不足からの不安に駆られたためのこととしながら,山口県内の国保医療データから検討を行なった結果を発表。それによると1%の入院受診率の変化に伴う入院医療費は3,400万円になると報告し,適正受診により医療費の大幅削減が図れることを示唆した。
 また,CPに関しては6題の演題が報告された。その中で,全国で一早くCPを導入した済生会熊本病院からは,導入以降のチーム医療の中での薬剤師の役割について述べられるとともに,抗生剤使用の動向を調査したところ,使用量が減少したことが判明したとの報告がなされた。
 さらに山崎絆氏(済生会中央病院副院長)が,定額制導入に向けたCP導入の経済的効果について考察を加えた他,サービスの質改善についても同病院から報告がなされ,医療ケアの質の効果測定に関しては小林美亜氏(東医歯大大学院)が発表した。