医学界新聞

 

癌治療における看護職の役割と成果を検討

第37回日本癌治療学会が開催される


 さる10月12-14日,岐阜市の長良川国際会議場を主会場に,第37回日本癌治療学会が,佐治重豊会長(岐阜大教授)のもとで行なわれた(2363号に既報)。
 今学会では看護関連の企画として,特別パネルディスカッション「本邦における新GCPをめぐる諸問題とその対策」(司会=前日医大 仁井谷久暢氏,徳島大 曽根三郎氏)や,パネルディスカッション5「癌治療における情報公開-IC,治験,カルテ開示など」(司会=大阪府立成人病センター 小山博記氏,愛知県がんセンター 福島雅典氏)などが行なわれ,また,看護セッションとして12題の口演も催された。


癌治療における情報公開

 パネルディスカッション5「癌治療における情報公開-IC,治験,カルテ開示などなど」は,佐々木康綱氏(国立がんセンター東病院)の「癌告知に絶対的・普遍多岐な規範はないが,方法論はある」との基調講演で始まり,8人の演者によって,インフォームド・コンセント(以下,IC),治験,カルテ開示といった情報公開に関する見解や課題が発表された。
 最初に「癌治療における情報公開の問題点」と題して,篠田雅幸氏(愛知県がんセンター病院)が口演。『告知』という行為そのものは患者・家族にとって有益であることを示した上で,「その方法には問題が多い。また患者自身にももう少し自立を求めたい」と語った。川崎恵二氏(関西労災病院)は,「予後不良な消化器癌患者における告知の現状と対策」を報告。患者の希望どおりの告知が行なわれるための条件の1つに患者の自己決定権をあげ,「患者には自己決定するためのICが必要で,看護職は患者の理解度を医師に伝える重要な役割を担っている」と語った。
 また,日馬幹弘氏(東医大)による口演「乳腺患者に対するICの実際-特に病理組織所見の掲示,説明の重要性について」に続き,谷田憲俊氏(兵庫医大)が「癌患者への治験情報全面開示の経験」を報告した。
 一方,斎藤裕子氏(東大)は,「臨床試験の対象となる患者・家族のための電話相談の現状-N・SAS-BC(抗がん剤市販後研究班乳癌術後補助療法研究委員会)を例として」を口演。試験に対する患者の負担を緩和し,医師との橋渡しをするためにN・SAS-BCが設置した電話相談窓口でのデータをもとに集計結果を考察し,「専門職による窓口は有用。試験前には試験全般の質問が多いが,試験中は,日常生活や薬剤に関する質問が多くなる」とし,さらに「この相談窓口に対する客観的な評価も必要」と語った。
 「臨床現場で直面する臨床倫理的問題の実態」を発表した濱口恵子氏(東札幌病院)は,同じ臨床場面でも医師と看護職の評価が違うことを示し,医師のコミュニケーション技術や治療方針の決め方などに対する評価に差が出たことを報告した。また,中尾照逸氏(PL病院)は「情報整理型カルテを開示し,遺族の心のケアに役立った食道癌の1例」を報告。「カルテ開示は遺族の心を慰めたが,カルテの書き方には,煩雑さが目立った」とし,カルテの記載方法の改善を求めた。そして,最後に登壇した江口研二氏(国立病院四国がんセンター)は「がん医療における情報公開-IC,治験,カルテ開示」と題して,特にCG(コミュニケーション・ギャップ)に言及。CGに対する文章の有効な使い方などを模索するとともに,治験,臨床試験における問題点も指摘した。

看護セッションでは

 看護セッション1では,石垣靖子氏(東札幌病院)の司会のもと,ICに関わる5題の口演が発表され,また看護セッション2では,松波登志子氏(岐阜大附属病院)の司会のもと,7名の演者が,癌治療の臨床における看護職の関わり方について検討した。