医学界新聞

 

「癌分子標的治療」

第58回日本癌学会シンポジウムより


 第58回日本癌学会(9月29日-10月1日,広島市;本紙第2361号に既報)の第3日目に行なわれた,シンポジウム9「癌分子標的治療-臨床へのステップアップ」(司会=東大 鶴尾隆氏:写真左,名市大 上田龍三氏:写真右)では,癌の治療に関わる分子標的の研究を臨床へ応用する方法が模索された。
 「性ステロイドホルモンレセプターの機能」と題する発表を行なった柳沢純氏(東大)は,ホルモン依存性癌について,エストロゲンレセプターの転写制御領域と,転写制御因子としての核内レセプターの機能を解析。また,長田裕之氏(理化学研)は「アポトーシス誘導性抗癌剤の開発とその分子機構」を口演した。続く桑野信彦氏(九大)は,「癌の血管新生と薬剤感受性の分子標的」と題し,P-糖蛋白質/MDR1遺伝子のヒト癌における相関を提示。癌血管新生阻害の新しい作用機構も発表した。
 一方,西山正彦氏(広島大)は,難治性固形癌に対して「抗癌剤感受性因子と分子標的化学療法」を口演し,薬剤投与によって変動する因子の修飾の効果を分析。さらに,「固形癌耐性因子」と題する発表を行なった鶴尾氏(司会)は,固形癌が抗癌剤治療に抵抗性を示す理由を考察した。また,続く花井陳雄氏(協和発酵)は「抗体療法の標的分子」を,斎藤泉氏(東大)は「遺伝子治療における標的特異性」を口演。いずれも分子標的治療に関する最先端の研究発表となった。