医学界新聞

 

第4回NDC公開セミナー開催

植村和行(日赤看護大修士課程,NDC会員)


 第4回NDC(Nursing Diagnosis Conference)公開セミナーが,さる9月10日,東京・広尾にある日本赤十字看護大学において「実践に活かす看護診断-実際に記録された看護診断をチェック!?」をテーマに開催され,全国から現場の看護職や看護教員67名の参加があった。

グループワークから学ぶ看護診断

 午前中は黒田裕子氏(日赤看護大教授,NDC代表)による教育講演「21世紀に向けての看護診断(NANDA,NIC,NOCの動き)」が行なわれ,NANDA(北米看護診断協会)の歴史,活動内容,分類枠組み,NIC(看護介入分類),NOC(看護成果分類)について解説された。
 午後には4時間にわたるグループワークが行なわれた。このグループワークでは1事例の看護記録を評価することに焦点が当てられた。用いられた事例を下に示す。
 今回の参加者には事前に本事例の全体像・看護診断・介入計画用紙・看護記録・転院時サマリーなどが配布されており,どの時点で,どのような看護診断を立てるのがよいかの検討,および事例のアセスメント評価の実施が課せられていた。グループワークでは,これらの事前準備のもとに看護診断,NIC,NOCを中心に評価が行なわれた。しかしながら,グループワークでは,時間的制約と課題の難しさのためか,総合評価まで進めないグループもあった。
 参加者全員のディスカッションでは,今回の事例に対して全体像的な情報収集ができていない,断片的情報にとどまっており的確なアセスメントができていない。アセスメントを統合する記録フォーマットがない,などの意見が出された。また,看護理論をもとにしたアセスメントの枠組みや,全体像がきちんと統合できる用紙の作成が必要との意見も多くあった。
 看護診断については,診断ラベルの選択が安易であり,優先順位が違う,情報不足からアセスメントに深みがない,SOAPが各看護婦の意見・考えになっており,問題が客観的に捉えられていないなどが指摘された。さらに,その対策としてNANDAの分類をよく理解し情報の分析をすること,カンファレンスでの十分な意見交換が必要,仮の診断を立案し表面化した時点で追加修正する方法をとる,などが意見としてあがった。
 NDCの見解としては,(1)情報はあるが計画的で継続される実践に結びついていないと,(2)情報の分析や統合が記載されていない。したがって,情報に対する看護者のアセスメントの思考過程を表すスペースとカンファレンスなどのトレーニングの習慣が必要,(3)全体像の記載がないという問題,(4)標準看護計画を安易に使っており,診断指標・関連因子・ラベルの基本的な理解が不足している,(5)上記のプロセスを踏んでいないため,効果的な看護介入計画,成果,実践評価ができていないなどの問題をあげた。以上のことから,全体的に患者を捉えることの重要さ,診断指標・関連因子・ラベルの基本的な理解,看護者の思考の過程がみえる記録の必要性が示唆された。
 今回のセミナーは,実際の記録を項目ごとにアセスメント評価するという点を強調したため,現場で使用される看護診断が患者を的確に捉えているかを考える上で有意義なものであった。また教育講演・グループワークを通して看護診断について学習するよい刺激になったと思う。次回のセミナーにも多くの人の参加を期待したい。

〔事例紹介〕 48歳男性。狭心症の精査目的で入院。既往歴に不安神経症があり,医師である義姉からの薬を内服している。入院中は検査・入院に対する不安表出が多々あったが,検査の結果,手術が必要とのことから転院となる。転院前は疾患・手術に対して前向きに捉えられるようになった。なお,入院時の看護診断リストは#1 CAG標準,合併症のリスク状態,#2 既往の不安神経症(初めての入院,CAGに関連した不安),#3 狭心症発作に関連した安楽の変調(胸背部痛)