医学界新聞

 

「日本家族看護学会第6回学術集会」に参加して

市江和子(日本赤十字愛知短大・助教授)


 さる9月18-19日に,日本家族看護学会第6回学術集会が,飯田澄美子会長(聖隷クリストファー大)のもと,「家族看護学の構築をめざして」をテーマに,浜松市のアクトシティ浜松において開催された。

家族看護学の構築と発展

 本学会の総会では,同学会が日本学術会議学術研究団体への登録が承認されたとの経過報告があり,家族看護学の構築をテーマとする今回の集会にふさわしい話題であった。発展途上にあるわが国の家族看護学が,看護学の分野において認められたことでもあるが,それとともに今後,より一層の学術的な役割を担うこと,そして会員相互の努力,研究開発がますます求められることを意味しているといえよう。
 会長講演では,「家族を対象とした援助方法の模索」と題して飯田氏が,「家族援助は,家族の発達段階を踏まえた問題解決のアセスメントが重要」と話された。さらに,体験学習の必要性とスーパーバイザー養成の急務や,家族看護専門看護師誕生への期待を熱く語られた。
 また特別講演では,岡堂哲雄氏(文教大人間科学部)が「家族の変貌と援助の理念-核家族化・少子高齢化への対処を考える」と題して,わが国の家族構造の変化による諸問題や,看護・介護の専門家による支援の必要性を語った。戦後50年にみる家族崩壊の軌跡は,現代家族を考える上で貴重な資料となった。
 メインテーマを受けたシンポジウム「実践からの構築をめざして」(座長=浜松医大 石垣和子氏,福島医大 原礼子氏)では,それぞれの機関からの報告が行なわれた。病院の看護活動からは「家族を1つのケアユニットとしてとらえる」(山口県立衛生看護学院 戸井間充子氏),地域の保健婦活動から「地域での患者・家族への支援-保健婦の力量を高めるための事例検討・家族ケア研究会」(茅ヶ崎保健福祉事務所 星野ゆう子氏),研究所の活動から「実践の場における家族看護活動の定着をめざして」(家族看護研究所 渡辺裕子氏)の3題が報告。その後に引き続き行なわれた特別発言,「ファミリーナースプラクティショナーの教育と現状」(聖隷クリストファー看護大 Phyllis R. Easterling氏)では,アメリカのナースプラクティショナーの教育と変化の実情が語られた。なお渡辺氏の報告では,看護におけるアセスメントの基になる情報にバイアスがかかっている現状があり,「今後の教育・研究課題は,事実をみつめて話し合い,方向性を見出すことだ」と述べられた。それぞれの報告からの学びとして,家族看護の実践と理論を結びつけて研究を行なう必要性を感じた。
 一般研究発表としては,看護の各領域から63演題が発表。学会の発展とともに演題数が増え,内容も充実してきている感があった。全体的な印象としては,実践と理論をつなぐ内容になってきたと思えた。

家族の機能と今後の看護職の役割

 わが国の家族崩壊の現状が問題とされて久しい。果たして,家族の機能は変化しているのだろうか。また,変化するものであろうか。現在,看護では家族を単位としてとらえ,家族関係にアプローチすることが求められている。家族看護学では,家族の機能を見据え,家族の関係性をどのようにとらえていくかの検討が必要だと思われる。これまでわが国の看護は,家族の中で生活している個人へのアプローチが中心であり,家族という集団への援助は少ない現状であった。
 今回の学会発表の中には,依然として家族としての集団をとらえるより,個に着目した報告がみられ,今後の検討課題と思われた。また,家族への援助の判断を正確にとらえる視点を持つことが必要とも実感させられた。看護における家族をとらえる意義は,家族の健康問題に働きかけることである。今後,家族へのアプローチについての理論を系統的に構築し,看護職の果たす役割をより一層明確にすることが重要との思いを強く感じた学会でもあった。なお,次回は明年,三重県で開催される。