医学界新聞

 

褥瘡治療はチームケアで

第1回日本褥瘡学会が開催される


 さる9月3-4日の両日,第1回日本褥瘡学会が,中條俊夫会長(青葉会青葉病院長)のもと,東京・品川区の品川区立総合区民会館「きゅりあん」で開催された。同学会は,高齢者の褥瘡の予防と治療が社会問題となっている中,医師,看護職,医療工学研究者を含めた医療福祉機器関係者らが互いに連携を図り,「褥瘡や創傷管理に関する教育,研究,専門知識の増進普及を図り,褥瘡の予防と治療の向上促進と充実に貢献すること」を目的に掲げ設立されたもの(本紙2357号にて既報)。

広範な医療関係者が一堂に会し論議

 今学会では,理事長講演「わが国の褥瘡治療の現況」(医療法人渓仁会会長 大浦武彦氏)をはじめ,海外からの招待講演や教育講演の他,パネルディスカッション「褥瘡のトータルマネジメント」(司会=京大宮地良樹氏,金沢大 真田弘美氏)を企画。一般演題は第1回にもかかわらず,褥瘡や創傷の治療に携わる広範な医療関係者からの発表が約150題にのぼり,アメリカからも2題の報告がなされるなど,褥瘡治療の研究・開発の底の深さが示された。
 一般演題発表は,予防,手術,有効なケア,在宅医療など多岐にわたるセッションで行なわれたが,手術治療の是非や術式の選択,ドレッシングをめぐる議論は,パネルディスカッションや教育講演でも話題となった。また,褥瘡治療におけるチームアプローチの展開の必要性(発表者=伊勢慶応病院形成外科,渓仁会定山渓病院,他)や,褥瘡予防のための医療材料・薬剤の開発の発表には多勢の会員が参集し,質疑応答にも熱がこもっていた。さらに,これまでの「創面を乾燥させる,消毒をこまめに行なう」などは,古い褥瘡治療法であり,「これまでの固定概念を変えるまったく逆の方法が新しい治療法を教育する必要がある」との指摘が,教育講演(高知医大倉本秋氏)や一般演題(山口県立大 田中マキ子氏,他)などで行なわれた。

「褥瘡外来」での成果を発表

 また,川口市立医療センター(埼玉県)の山名敏子氏は,地域ニーズに合わせた「褥瘡外来」の活動を報告。同センターでは,1994年より専門医,ETナースらがストーマ外来に褥瘡外来を併設し,川口市および近隣市町村の病医院や在宅での褥瘡患者約800人のケアを行なってきた。院内教育活動,かかりつけ医や訪問看護ステーションとの連携やデジタルカメラを用いた情報交換等を実践するとともに,医師や看護職らを対象にした「スキンケア講習」,「創傷治療セミナー」の開催などをはじめたところ,院内では褥瘡の発生率が著しく低下。また院外では,病診連携が広まっていったなどの効果が現れた。その上で山名氏は,在宅医療における課題として,緊急時の入院態勢,ドレッシング材などの医療材料費のコスト高,患者教育の難しさなどを指摘した。地域における同様の試みは,他のセッションでも報告されたが,その中でも同センターの外来活動は,成果を見せている典型例として特筆できよう。
・日本褥瘡学会事務局:〒162-0802 東京都新宿区改代町16 (株)春恒社学会事務部
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