医学界新聞

 

画像診断による心機能評価の進歩

第47回日本心臓病学会シンポジウム


 さる9月13-15日,「第47回日本心臓病学会」が村山正博会長(聖マリアンナ医大)のもと,横浜市のパシフィコ横浜において開催された。
 本紙では,初日に行なわれたシンポジウム「画像診断による心機能評価の進歩」(座長=鹿児島大 鄭忠和氏,山口大 松崎益徳氏)を紹介する〔今学会の詳細については2358号(10月11日付)に掲載〕。


心エコー・核医学による新たな評価法

 最近の画像診断の進歩の中でも,特に左心容積計測,左室壁運動評価の開発はめざましく,多様な評価法が開発されつつある。本シンポジウムではその現状を踏まえ,それぞれの画像診断法の有用性と問題点をクリアにし,日常臨床への還元にむけて議論される場となった。
 最初に,現在コロンビア大に留学中の穂積健之氏(神戸市立中央病院)が,自動的・3次元的に心機能を評価する心エコー法として,(1)心内膜を自動的にトレースして,時間的な容量の変化を描写できるACT法,(2)血流量を自動計測するACM法,(3)3次元的に容量を計測できる3次元心エコー法を概説。これらは時間短縮,オフライン解析が可能などの利点と,オリジナル心エコー画像に依存する,適応の選択などの問題点を提示。また新しい3次元心エコー法として「volumetoric scan法」を紹介した。
 続いて鄭氏が,自らの教室で開発した,収縮能と拡張能を連合して評価する超音波ドプラ指標として,「TEI index」(Total Ejetion Isovolume Index)を紹介。TEI indexはルーチンの心エコー検査で容易に測定でき,拡張型心筋症,心筋アミロイドーシスなど種々の疾患の予後予測や健常と偽正常の鑑別が可能となることを提示し,臨床の場での有効性を証明した。
 追加発言として,小野塚久夫氏(北大)は,心エコードプラを用いて,左室拡張機能の指標である左室流入血流伝播速度(PVE)が心疾患の予後予測に有用か否かを検討。氏は「収縮心不全における心不全と心臓死の予測に有用で,肥大型心筋症における心房細動発生との関連から,その予後評価にも有効性が期待できる」と結んだ。同じく追加発言として,村田和也氏(山口大)は,断層心エコーで血液と心臓構造物との境界を自動認識するシステムを応用したA‐SMA(automated segmented motion analysis)を用いて,オンラインで局所心機能を評価する方法を開発したことを報告。高血圧性肥大心を対象に,これまで心エコー法では困難であった左室壁運動の拡張期asynchoronyの客観的評価を可能にしたことを明らかにした。
 丹下正一氏(北関東循環器病院)は,心筋血流製剤にTc-99m tetrofosminを使用し,心筋血流シンチと同時に心機能評価が可能となったquantitative gated SPECT(QGS)を用いて,撮影時にATP負荷とドブタミン負荷を行なった。その結果,安静時と比較して心筋局所壁運動の変化を観察することが可能となり,さらに,ATP負荷では壁運動の低下から冠動脈狭窄が,ドブタミン負荷ではviabilityの評価が可能となったことを示した。
 続いて,阿部充伯氏(愛媛県立中央病院)は,虚血性心疾患300名を対象に99mTc-tetrofosmin QGSを用いて心機能指標を算出し,左室造影との比較を行なったところ,「EDVやEFを過小評価する傾向にはあるが,ほぼ同等の成績が得られ,臨床上有用」であることを明らかにした。特に,急性心筋梗塞患者の心機能評価は急性期,慢性期ともによく相関し,心筋梗塞後の左室リモデリングを非観血的に評価できる点が有効であることを示した。

既存の画像診断法を応用

 小山靖史氏(愛媛県立今治病院)はビデオを用いて,自身らが開発したヘリカルCTの4次元心室画像を紹介。これはヘリカルCTで撮影し,得られたデータをワークステーションに転送し,Double-Oblique法を行ない拡張期・収縮期四腔断面像を作成するというもの。この画像における左室容量測定と左室駆出率は,左室造影とよく相関することから,心機能評価における有効性を強調した。さらに将来の展望として,「CT以外の画像でも同様のワークステーションを作成することにより,心臓の形態,ボリューム,機能,性状の評価が可能となるのではないか」と述べた。
 追加発言として,山上祥司氏(愛知県立尾張病院)が,高額で日本に20数台しかないとされる電子ビームCT(EBT)を紹介。これは撮影法がシネモード法とボリュームモード法の2種類あり,収縮末期,拡張末期をトレースして,四腔の容量,駆出量,駆出率,心拍出量,心筋容積が求められるもの。高血圧性心肥大,急性心筋梗塞後の心機能評価に有用とのデータを示すとともに,造影剤使用や,不整脈患者には計測不能などの欠点はあるものの,ペースメーカー心や人工弁置換術後の機能評価に有効であり,またエコーでは困難とされた右室や右房,左房などの計測が可能となったなど長所があげられた。
 最後に,塚原玲子氏(川崎社会保険病院)が,「再潅流後冠血流速度,冠潅流圧パラメータは退院時心機能を反映するか」と題して登壇。急性心筋梗塞後の責任冠動脈にドプラフローワイアを挿入し,ATP投与後の冠血流予備能(CFR)を測定。その中から,座標軸上に圧流速曲線を作成し,ゼロ流速圧(Pzf)を算出,CFRとPzfが退院時の左心機能を反映するかを検討した。冠血流速パラメータとしてのCFRは,心機能との関連は見られなかったが,Pzfについては退院時の局所壁運動異常(SD/Chord)との負の相関関係を呈したことから,「冠灌流圧のパラメータとしてPzfは,左心機能の良好な指標となる可能性が示された」と結んだ。
 すべての演題終了後,司会と演者の間で行なわれた議論では,それぞれのモダリティについての特色がさらに整理され,問題点が明らかになった。また最後に,司会の松崎氏は,画像診断の新技術に期待する点をあげ,新たな画像診断法を展開させた今回の演者の多くが,第一線病院で活躍する医師であることを高く評価した。