医学界新聞

 

介護保険と難病患者ケアを論議

第4回日本難病看護学会開催


 第4回日本難病看護学会が,さる8月20-21日の両日,中田まゆみ会長(北里大教授)のもと,「在宅難病療養者のケアシステムの確立-保健医療福祉制度の改革に向けて」をメインテーマに,神奈川県・相模原市の北里大学で開催された。
 本学会では,会長講演「地域ケアシステム構築と今後の課題」をはじめ,シンポジウム I「介護保険制度導入と難病ケア」,II「難病ケア提供者を支えるシステムをつくるには」の他,初日の夕方からは4グループに分かれた自由集会を開催。また2日目には,難病患者家族の講演による市民公開講座「ソレデモ,ヒカリヲ」(横浜市「きぼうの輪」会長 滝井淳一氏)も企画された。

21世紀は介護と看取りの医療の時代

 中田会長は,「高齢社会の到来とともに,今後は多臓器疾患を持つ後期高齢者の増加が予想される。21世紀は外来医療と在宅医療重視の時代となり,介護と看取りの医療がより推進される」と予測。その上で,これまでの難病対策の概要を解説するとともに,地域医療システムのキーワードとして,人権尊重,利用者のQOL,家族支援,チームケアなどをあげた。
 また,本学会の今後の展望と課題について「(1)保健・医療・福祉の専門職および難病在宅療養者・家族,機器供給会社,さらに市民を包括したユニークな学会運営の継続,(2)社会的にまだ理解されていない難病に関する実態と学術的情報を提供し,さまざまな領域の専門職に対する研究・研修の「場」とする,(3)介護保険の施行にあたり,難病療養者の医療的ケアサービスの重要性を提言し,施策に反映させていく,(4)全国各地での学会開催により,難病ケアシステムの構築に寄与する」などをあげた。

難病ケアと介護保険

 シンポジウム I(司会=都立保健科学大川村佐和子氏,神奈川県立衛生短大 山崎京子氏)では,まず河西悦子氏(藤沢保健福祉事務所)が藤沢市での特定疾患在宅療養者の実態調査の結果を報告。それによると,介護者の55.3%が男性であり,50-64歳が57.7%を占めている。また,36.1%が介護を継続する上で不安があると答えているものの,相談相手として「保健所」を指摘するものは17%にすぎなかった。
 また,ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者家族の長岡明美氏は,在宅で16年間介護にあたっている実態を報告。「受けたい時に受けられるサービスを希望したい」と主張。小林邦代氏(横浜市中区医療センター訪問看護ステーション)は,臨床心理士との連携を取りながら訪問看護を展開していることを,実例をあげ有効性を解説した。
 大前利市氏(奈良県郡山保健所)は,介護保険制度導入後の難病ケアについて,保健所の視点からの検討を行なった。大前氏は,難病ケアを成功させるためには「ケアプラン作成者は,難病患者の特性と老化とは違う症状であることを熟知し,難病特有の病態に合わせた介護内容と量を提示することが重要」と指摘し,大前氏らが実践している郡山保健所の試みを紹介した。