医学界新聞

 

第42回全国医学生ゼミナール in 岐阜



医ゼミに先立ち,第31回日本医学教育学会では,加村さんが「全日本医学生自治会連合が医学生に対して行なった卒後研修全国統一アンケートの結果」を発表
 今回の全国医学生ゼミナール(以下,医ゼミ)では,「つかもう!医学・医療を学ぶおもしろさ-学びがいのある医学教育に!!」をテーマに掲げ,700名を超す医学生・医系学生が岐阜市に集まった。
 参加学生全員で行なう企画は,安川寿之輔氏(名大名誉教授),神津忠彦氏(東女医大教授),藤崎和彦氏(奈良医大),下正宗氏(東葛病院副院長)らを招いたメイン企画の他に,全国企画((1)脳死・臓器移植,(2)平和)や,記念講演(東大大学院教育学研究科教授 佐藤学氏),文化人講演(聖ヨハネ会桜町病院 山崎章郎氏)などがあり,学生たちは,招かれた演者の発表や学生のレポートを熱心に聴いていた。
 一方「分科会」や「交流会」では,北海道から沖縄まで,全国から集まった学生たちが小グループに分かれ,テーマごとに自分の意見や疑問を討論し合った。なお,今年から新たに企画された「地域別交流会」は,地元の共通の話題で盛り上がり,初めて参加した学生が交流を深めるには最適の場となったようだ。

ホスピスを知っていますか?

 「僕のホスピス体験-自分らしく生きるということ」と題して行なわれた文化人講演では,演者の山崎氏が,「みなさん,ホスピスって知っていますか」と問いかけた。
 山崎氏は,まずShip Doctor(船医)として,漁船や海底調査船に乗った体験を語り,「その時,蘇生術に対して,『蘇生してもまた病人に戻るだけ。蘇生術は患者のためになっているのだろうか』という疑問を抱くようになった」と,末期患者のケアに携わるようになった動機を説明。「慢性期の患者さんへのケアは,その人が末期であっても急性期の患者さんより後に回されてしまう」ということに注意を促し,さらに,ホスピスに対する明確なイメージを持っていない多くの学生に対して,ホスピスの実情を解説した上で,「末期の患者さんには,患者さんが大切にしている日常を提供してあげることが大事」と口演。ホスピスで得た経験をもとに,末期の患者さんに対する心構えを語った。

みんなで学び,成長した

 閉会式では,全国実行委員長の加村さんが,「みなさんの力で作り,成功させることができた。ここで学び,成長したことを,今後の医学教育に活かし,21世紀を切り開いていきたい」と成果を語った他,現地実行委員長の関さんが,「みんなで討論し,学ぶことが楽しい」と感想を述べ,最後に,各大学の代表者や実行委員らが壇上にあがり,合唱団の合唱とともに幕を閉じた。


第42回全国医学生ゼミナールを終えて

関 大介(現地実行委員長・岐阜大医学部6年)

はじめに

 今年の8月9日から12日にかけて,岐阜大学において第42回全国医学生ゼミナールin岐阜が開催されました。岐阜大学では1975年以来24年ぶりの開催であり,また,ちょうど自分の生まれた年にあたるため,感慨もひとしおでした。
 今年はメインテーマに「つかもう!医学・医療を学ぶおもしろさ-学びがいのある医学教育に!!」を掲げ,医学教育やそのおおもとの「学び」に焦点をあてて企画しました。 全国的にも医学生のカリキュラムが厳しくなる中で,参加者は700名を超え,参加した学生たちは講演やシンポジウム,ディスカッションなどを通して,医学医療のあり方を学び,将来の医療従事者像についてお互いに交流し,深め合いました。

今年の医ゼミの企画について

 今年の医ゼミでは,記念講演に佐藤学氏(東京大学大学院教育学研究科教授)が,「なぜ学ぶのか」ということをご自身の体験も交えてさまざまな角度から話されました。文化人講演は,『病院で死ぬということ』の著者でもある山崎章郎氏(聖ヨハネ会桜町病院ホスピス科部長)をお招きして,ホスピス医としてこれまでの体験を通して感じたことを話されました。
 メイン企画では,医学教育のあり方について問いかけ,よりよい医学教育とは何なのか考えました。全国企画「脳死臓器移植」では,すでに4例の移植が行なわれている事実に対して,改めて問い直しました。「平和」では新ガイドラインが国会を通過する中で,医師・医学者にとっての平和とは何なのかを話し合いました。
 分科会は全国から50以上の話題が持ち寄られ,その中でも2000年4月に導入される介護保険については,地域の実態や自治体の現状などを調べてきて,全国各地からさまざまな報告がありました。

“学ぶ”ということの意味を学んだ医ゼミ

 今年はメインテーマで“学ぶこと"に焦点をあてました。現在さまざまな大学でカリキュラム改革が行なわれ,一定の改善が見られる一方,厳しい詰め込み教育の問題は解決せず,また度重なる医療事故や医学生の相次ぐ事件など,社会から医師の養成に対して関心が高まる中で,そもそも“学ぶ”とは何なのか原点から問い直すことにしました。
 学ぶことは決して知識をつけるだけではなく,医療への誠実な態度や人間性をも身につけるものであること。学ぶことで,より豊かな生活をおくることができるようになること。医ゼミの中で自由に主体的に学ぶことで,学ぶおもしろさにたくさんの学生が触れたのではないでしょうか。

医ゼミへの期待の声

 今回の医ゼミの取り組みには,100名を越える岐阜大学の先生方からも賛同をいただきました。また少なくない先生方から,21世紀を担う私たち医学生に対して,応援のメッセージをお寄せいただきました。
 医ゼミは夏だけではなく,年間を通しての活動です。また,今回参加できなかった学生からもたくさんの応援があったように,決して医ゼミは参加した学生だけのものではなくて,いまの社会の中で生活している大多数の学生の願いでもあります。


岐阜医ゼミに参加して

藤原 大(東北大医学部4年)

 私は主にメインテーマのプロジェクト,当日受付,分科会作りに関わってきました。
 今回のメインテーマ「つかもう!医学・医療を学ぶおもしろさ-学びがいのある医学教育に!!」に関しては,学生レポート作成のため連日連夜の学習と討論を重ねました。その中で,“学ぶこと"を改めて捉え直す意義や医学教育の本質・あるべき姿が,自分なりに深められていきました。
 今日,医学・医療に対する社会の関心が非常に高まっています。社会が求める医師とはいかなるものか,その医師を養成する医学教育はどうあるべきかを考えることは,我々学生にとっても社会にとっても重要な取り組みだと思います。“医ゼミ”という医学生・医系学生の自主的学術運動においてこの内容がメインテーマに掲げられ,多くの学生と共に考え議論できたことは本当にすばらしいことです。私自身その中心となって活動したことで,多くのことを深く学ぶことができました。
 メインテーマの学生レポートでは,医学教育を2つの視点から捉えています。“医師養成の全体像から見た医学教育”と“大学教育としての医学教育”です。この2つの視点は,決して対立するものではありません。両者が統合されてこそ,より良い医学教育・医療提供を可能にするのです。このような見方は,一昨年の医ゼミで議論された『科学性と人間性』を統合して捉えるという見方と同じであり,今年の医ゼミもこれまでの到達をしっかり受け継いだものであると実感しました。また最後の行動提起では,共に学び合い豊かな人間性を身につけていくこと,学びがいのある医学教育を創っていくことを提起し,これからの学生活動の大きな指針となりました。
 今年の岐阜医ゼミは,私自身にとっても,“東北大学”にとっても大きな飛躍の機会となりました。今後地元に帰ってからやるべきことが明確になり,同じ大学からの参加者のなかにも『医ゼミをもっと広げたい』『もっと色々学習したい』という声が上がっています。その声を無駄にしないように,今まで以上に充実した学習活動と宣伝活動を頑張っていきたいと思います。そして,全国の学生の熱い思いを集め,来年もまたすばらしい医ゼミを創っていきましょう。
 最後に,今年の医ゼミを創ってきたみなさん,おつかれさまでした。また来年会いましょう。