医学界新聞

 

透析医療における看護の専門性を求めて

第44回日本透析医学会(看護部門)開催


 さる6月25-27日の3日間,第44回日本透析医学会が,黒川清会長(東海大)のもと,「サイエンスとアートとテクノロジー」をテーマに,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。なお,今回は「'99 Japan Kidney Week」として,第42回日本腎臓学会(会長=東海大 堺秀人氏)との共同開催となった(本紙2350号に既報)。
 本学会では,開会講演として(1)「これからの透析医療と腎不全対策」(黒川清氏),(2)「人の命-透析医療を見据えて」(日鋼記念病院 大平整爾氏)をはじめ,招聘講演や両学会合同シンポジウム「糖尿病の生涯」(司会=東女大 馬場園哲也氏,岡山大 槇野博史氏)などの他,合同ワークショップ2題,'99 Japan Kidney Week特別セッションなどを企画。また,透析学会独自の企画としては,教育講演やワークショップの他,パネルディスカッション「高齢者透析患者の支援-通院困難患者の透析を誰がどこで診る」(司会=信楽園病院 鈴木正司氏,金山クリニック 江崎眞知子氏),ミニシンポジウムなどが行なわれた。

透析看護の専門性を論議

 本号では,これらの中から看護部門の企画であるワークショップ「透析医療における看護の専門性を求めて(司会=西部腎クリニック・日本腎不全看護学会長 宇田有希氏,阪大 江川隆子氏)を報告する。
 司会の宇田氏はワークショップの開催にあたり,「専門領域にはそれぞれの専門性を持った看護が必要」として,「プロとしての意識改革をどのように進めていけばよいのかを,活発な意見交換から感じ取り,その討論の中から学会として認定するエキスパートナースの養成や資格取得の方向性を探っていきたい」と,開催趣旨を述べた。その趣旨のもと,本ワークショップには6名が登壇。まず,大橋信子氏(東女医大腎臓病総合医療センター)は「透析看護の専門性」を口演。1993年より同センターが取り入れている「エキスパートナース制度」について解説し,エキスパートナースに対するイメージとしては,(1)看護職のキャリア開発が促進される,(2)直接的な患者ケアに対し,指導・教育してくれる,(3)看護の質を高めてくれるの3点に集約されるとした。
 次いで,岡崎陽子氏(玄々堂君津病院)は,「自己管理が困難であった血液透析患者に変化をもたらす看護援助の専門性」を発表。透析看護の専門性を構成する要素として,(1)肯定的な関心を寄せることができる,(2)低下しがちな自尊感情を脅かさないで寄り添える,(3)希望を共有できる,などを指摘した。また,松橋ひろ子氏(厚生連篠ノ井総合病院人工腎センター)は,社会復帰を前提とした自己管理透析を基本とする外来透析を行なっている立場から,「透析医療における看護の専門性を求めて」を口演。さらに,病棟にCAPD(持続性自己管理腹膜透析)外来を置き,専任看護職1名が常勤する専任体制を実施している福岡日赤病院からは下山節子氏(腎臓内科病棟)が,「腎臓内科病棟に位置づけたCAPD外来と専任看護体制の効果」と題して発言。「CAPD療法において専門性を求めるには,看護の体制作りが重要」と強調した。
 企業ナースの立場からは,佐藤弘子氏(バクスター)が,クリニカルコーディネーターの活動から考察した「企業ナースからみたCAPDナースの専門性」を口演。一方,教育の立場からは,森田夏実氏(前国際医療福祉大)が,患者-看護職をペアにして面接調査を実施した「看護の専門領域としての透析看護の位置づけ」を発表した。