医学界新聞

 

家族機能の活性化をめざして

第31回聖路加看護大学公開講座開催


 さる6月26日,第31回聖路加看護大学公開講座(羽山由美子委員長)が,ブレンダ・リースブレナン氏(米・ユタ州,ファミリー・ナースプラクティショナー)を講師に招き,「ファミリー・ナースプラクティショナーによる家族支援―家族機能の活性化をめざして」をテーマに,聖路加看護大学講堂で開催された。

RCT家族支援のプログラム

 本公開講座は,ブレンダ氏による2度の講演とフォーラムで構成された。
 ブレンダ氏は,1978年にユタ州立大で修士課程を修了。その後,地域の内科クリニックで家族療法を専門に個人開業し,ユタ州West Jordan市で「Primary Care Famiry Therapy, Inc.」を設立した。同社は,プライマリケアの医師やナースプラクティショナーら複数の職種によるチームアプローチで,家族機能が低下した家族に介入して,家族のメンタルヘルスの活性化を図る援助をしている。
 本講座では,ブレンダ氏が実践の中から開発した,個人や家族,地域社会が持っている共感的な人間関係のさまざまな能力やスキル,資源などを明らかにし開発する方法であるRCTTM(Relationship Competence Training;関係能力構築訓練)を紹介。ブレンダ氏の家族支援のプログラムは,この家族全体を援助の対象としてかかわるRCTの考え方を中核に,メンタルヘルスの問題に焦点をあて,人間関係がより適切な関係性へと発展することで,問題を軽減,解決していくアプローチである。

3つの家族パターン

 ブレンダ氏は,講演の中で「家族には,(1)回避・分離した家族型,(2)無秩序な・両値的な家族,(3)関係構築能力のある・安定した家族型,の3つの観察可能な家族類型がある」と述べた。すなわち,(1)は家族の1人が病気になった場合,支援関係を回避するなど,互いを回避する心理的距離をおいたパターン,(2)は家族歴に未解決の深く傷ついた記憶があり,支援関係における欠乏と不安定さ,混乱があるパターン,(3)は支援関係を信用し,解決策を求める人々であり,安定した関係能力のあるパターンと分類。その上で,RCTからスクリーニング,診断・検査,介入・予防・予測から根拠に基づいたプロセス評価へと発展させる方法論の実行について解説した。なお,実行には(1)プライマリケア共働実践トレーニング,(2)関係構築能力の療法トレーニング,(3)消費者・家族関係構築能力トレーニング,(4)雇用者・被雇用者関係構築トレーニングの4つの教育方法があり,それぞれについて詳細な解説を加えた。
 またブレンダ氏は,「ジョーダンバレーメンタルヘルスクリニック」にうつ病で来院した1800人に対し,93%に医療介入を行ない,39%をメンタルヘルスに紹介。そのうちの92%がPCP(プライマリケア実践)に応諾したことを明らかにし,疾病特有の症状を持つ人の減少,一般的健康機能の改善がみられたことを報告した。
 なお,講演にあわせて2回開催されたフォーラムでは,前半を川越博美氏と平林優子氏が,後半を小松浩子氏と三橋恭子氏が司会を努め,演者とフロアをつなげた。なおフロアからの,「家族のパターンは日本の実情には合わないのではないか」との質問には,「実践の中から導き出されたパターンであり,あてはまないものがある」とブレンダ氏。さらに,RCTのトレーニング方法やRCTプログラム習得の方策などに関し,質疑応答が交わされた。