医学界新聞

 

地域看護学分野の発展をめざして

第2回日本地域看護学会が開催される


 さる6月19-20日の2日間,第2回日本地域看護学会が,平山朝子会長(千葉大教授)のもと,山梨県の山梨医科大学を会場に開催された。
 同学会では,会長講演「地域看護学の発展と教育の役割」の他,口演および示説による一般演題65題,および応募演題で構成されたミニシンポジウム(1)地域看護における臨地実習指導の方法,(2)保健婦(士)の行なう地域作りの方法,他全6セッションや,同様に応募演題によるワークショップ(1)地域保健法下の市町村・保健所保健婦(士)の役割,などで28題の発表が,地域看護教育研究者,市町村・保健所の看護職をはじめとして,在宅看護,学校看護,産業看護の分野から行なわれた。

地域看護研究と大学院教育

 また今学会では,地域看護学の研究および教育方法の位置づけを明確にすべく,ワークショップ(2)地域における看護介入に関する研究をめぐって(世話人=北海道医療大 深山智代氏,他),(3)修士・博士課程における地域看護学教育―研究・実践能力をどう育成するか(世話人=東大 村嶋幸代氏,他)が企画された。
 ワークショップ(2)では,昨年の第1回日本地域看護学会(1998年6月20日,会長=東大 金川克子氏)で発表された84演題を,研究目的,研究方法,研究者の所属などから分析した結果が報告された。それによると,発表(研究)者の所属は,大学等看護教育研究機関に所属する者が73%で,調査票や面接,記録物で状況を把握する研究が多く,実際に研究者が看護介入をしたり,看護職が看護実践を行ない,その状況を観察評価した研究は少なかった。これを踏まえて,同ワークショップでは「地域看護活動の向上には,研究機関と実践機関に所属する者が相互に協働して看護研究を進めていく必要がある」との視点から,大学院生として地域で看護介入による研究を進めている2氏が話題提供を行ない,その後の討論へと結びつけた。
 なお同(3)では,看護系大学で始まった専門看護師教育課程(本紙2339号参照)に関連し,日本看護系大学協議会規準の「地域専門看護師教育」の審査規準などが紹介された。また,聖路加看護大(川越博美氏),東大(村嶋氏),東医歯大(島内節氏),千葉大(平山氏)から,各大学院の地域看護学専門課程のカリキュラムや一部講義内容が紹介され,その後の討論につなげた。

教育と実践との連携が重要に

 平山氏は会長講演で,(1)大学の使命と地域看護学の役割,(2)教育研究の課題,(3)教育研究活動の実際,(4)大学の地域貢献,の4視点から考察。全国の看護系大学60校に行なった調査結果から,地域看護学分野を設置している大学は47校,担当教員は総数で155名,1校あたり3.3人であったと報告。「他の学問領域では専門領域の細分化が進んでいるが,看護学は専門分野を適切に細分化するほどに人材が豊かではない」と指摘した。また,「今後の学問の発展には,各領域の知識や技術の応用と統合,および各学科との連携とフィードバックが必須」と発言。「看護そのものは,実践と連動しない限り発展はしない」として,地域看護における人材の育成の必要性を論じるとともに,地区活動における支援ツールの開発も課題にあげた。