医学界新聞

 

アジア地区開催に世界各国から参集

第13回世界理学療法連盟学会が開催される


「文化を超えて」をテーマに

 さる5月23-28日の6日間にわたり,日本学術会議ならびに(社)日本理学療法士協会の主催による,第13回世界理学療法連盟学会(13th International Congress of World Confederation for Physical Therapy,組織委員長=広島大 奈良勲氏)が,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
 世界理学療法連盟(WCPT)学会は1953年に第1回が開催(ロンドン)され,以後4年ごとに開かれているが,アジア地区での開催は今回が初。なお今回は,「異文化を相互に理解しながら,それを超えて世界に通じる共通の概念としての理学療法学を構築していく必要がある」とのことから,「Bridging Cultures-文化を超えて」をテーマに据えた。
 初日に行なわれた開会式には天皇・皇后両陛下が出席。天皇陛下は,「各地の施設で,理学療法士,作業療法士が障害を持つ人々や高齢者の治療にあたる姿に接し,また寝たきりの高齢者がよい看護を受けた結果,起きて生活できるようになったとの話を耳にし,そのめざましい働きに深い感慨を覚える。理学療法が,人々の生活の質の向上に貢献していくことを願う。第1回の世界学会が開かれた年に,日本はまだ国家資格としての理学療法士はいなかったが,今日では1万9000名にも達する人を育ててきた。比較的歴史の浅いこの分野だが,ますますの発展を願っている」と挨拶された。なお,両陛下は開会式後に行なわれたウェルカムパーティーにも出席,各国の参加者らと懇談された。
 一方,小渕首相(代読),宮下厚生大臣らとともに祝辞を述べた岡崎洋神奈川県知事は,「神奈川県に,リハビリや看護に視点を置き,保健・医療・福祉を統合する県立大学を新設する」との構想を明らかにした。

理事全員が登壇したシンポジウム

 なお同学会では,「異文化論」(オランダ・ティブルク大 Niels Noorderhaven氏)をはじめとする6題の基調講演(日本人演者による講演は,慶大の千野直一氏による「日本におけるリハビリテーション活動」と,尼僧であり作家の瀬戸内寂聴氏の「仏教の心」の2題)の他,「文化を超えて」「高齢者の理学療法」など7題のシンポジウムや,「在宅ケアにおける理学療法士と作業療法士の連携」「開業理学療法士」などのワークショップが7題,また「臓器移植における理学療法の役割」など13テーマのセミナーが企画され,一般演題は549題が口演で,668題がポスターで発表された。
 また,シンポジウム「文化を超えて-Bridging Cultures」(座長=WCPT会長英・David PG Teager氏)には,奈良勲委員長(アジア・西太平洋地区代表),C.McGinley氏(カナダ・北中米地区代表),A.Otieno氏(ケニア・アフリカ地区代表),A.Holmstrand氏(スウェーデン・欧州地区代表),S.Gusman氏(ブラジル・南米地区代表),B.Myers氏(カナダ・WCPT事務局長),S.Edelsberg氏(米・WCPT副会長)の理事会メンバーが勢ぞろいし,各地区からの活動報告がなされるとともに,WCPT本部でのE-mailやFAXで連絡を取り合っている実態や今日に至る発展経過が報告された。
 WCPTは「国際的,非政府的,自発的,職業的な団体の連盟であり,会員は国籍,人種,皮膚の色,政治,性別,社会的地位を理由に制限をしない」ことを定義に掲げ,1951年にコペンハーゲン(デンマーク)で設立総会を開催。(1)高度な理学療法教育と業務の促進,(2)情報交換の促進,(3)科学的研究の促進,などを目的として,世界71か国が加盟する会員約21万人を有する団体である。またWCPT学会は,理学療法学に関する研究および関連諸活動を推進,調整するともに知識を互いに交換し合うことによる研究発展への寄与を目的として4年ごとに開催されている。
 一方,日本理学療法士協会(奈良会長)は1966年に設立され,現在1万9000人近くの会員数を誇り,年に2回学術集会(春=全国学会,秋=全国研修会)を開催。WCPTには1974年の第7回のモントリオール(カナダ)学会の時に加盟が承認された。
 なお今WCPT総会で,Sandra Moore氏(オーストラリア)が第11代理事長に選出された