医学界新聞

 

「開かれた医療・看護」をテーマに

「看護の日・看護週間」中央行事「看護フォーラム」開催


 1990年に一般市民や知識人の呼びかけにより,「看護の心をみんなの心に」を合言葉に始まった「看護の日(5月12日)」が制定9周年を迎え,さる5月15日には,1999年「看護の日・看護週間」の中央行事「看護フォーラム」(主催=厚生省・日本看護協会)が,東京・有楽町のよみうりホールで,「開かれた医療・看護-患者・市民とのコミュニケーション」をテーマに開催された。なお,今年の「看護の日・看護週間」には,全国2000か所の施設で実施され,約3万人が,各地で看護・介護体験などの行事に参加。また,本年の中央行事となった同フォーラムは,1部が特別対談「看護の日に寄せて」,2部はパネルディスカッション「開かれた医療・開かれた看護-患者・市民とのコミュニケーション」の2部構成で行なわれた。

取材から学んだ思いを語る

 特別対談「看護の日に寄せて」には,女優で国連開発計画親善大使に任じられた紺野美沙子氏と,大学時代からの友人という松尾紀子氏(フジテレビアナウンサー)が登壇。紺野氏は,最近自身の育児体験記である『怪獣の育て方』を出版したが,「4歳になる息子が喘息のために,医療とのかかわり方は大きい」と述べる一方,テレビ取材での看護職の活躍から学んだ思いを語った。また,松尾氏は現在2児の母であるが,自然分娩の取材をしたことから第2子を自宅分娩し,夫や長女が付き添ったことや,その長女にアトピーがあることなども報告。2氏の軽妙な語り合いの中では,ホームドクターを持つ意義や,「患者も医師も看護職も対等であるべきと考える」などの発言があり,また最近の臓器移植の実施に関連し,「夫と医療や死の迎え方について話し合ったか」なども話題となった。

患者の意思を伝えられる環境作りを

 第2部のパネルでは,松尾氏の司会のもと,向井敏氏(文芸評論家・入院体験から),中村民世氏(看護職・セカンドオピニオンを推進させる会),新居昭紀氏(聖隷三方原病院長),井部俊子氏(聖路加国際病院副院長)の4人がパネリストとして登壇した。
 癌患者としての入院体験を語る向井氏は,「60歳を過ぎて開腹手術をすると寿命が10年縮まる」という意味の「一腹十年」の言葉を披露。また,「膀胱摘出と言われインフォームドコンセントを受けたが,どう理解してよいか,自分としての意見がなかった」と語る一方で,「入院したからこそ自然に看護婦さんと接触できたが,これほどまめに働く人がいるのかと,若い人を見直した」と述べた。
 中村氏は,セカンドオピニオン制度について,「検査データは患者のもの,借りられるもの,を常識に」と,患者が気軽に言いだせる状況を作る必要性を訴えた。
 また新居氏は,「自己決定がなければ治療は進まない」と指摘し,自院での導入を推進しているセカンドオピニンについては,「医師が直接,患者さんに勧めるのが最もよい方法」と述べた。
 さらに井部氏は,厚生省の「インフォームドコンセントのあり方に関する検討会報告書(1995年6月)」を紹介し,「インフォームドコンセントは患者本人の意思を最大限尊重させることが狙いであり,文書で確認を迫るのが本意ではない」と指摘した。
 フロアを交えた総合討論の場では,向井氏が「患者が意思を伝えられる環境を作ることが大事。また患者が気楽にしゃべることのできる医療者の存在も重要」と述べる一方,新居氏は「患者さんはわからないことは医療者に遠慮なく聞いてほしい。さもないと医療は遠くなるばかりで,よい医療はできない」と語った。また井部氏は,「患者さんから医師は個人名で呼ばれるが,看護職も『看護婦さん』ではなく,顔を持った『○○さん』であれば,より必要な情報を流してくれるかもしれない」と述べた。
 なお,会場では「インフォームドコンセントのあり方に関する検討会報告書」の抜粋や「医師にかかる10か条」の文書が参加者に配付された。