医学界新聞

 

第2回NANDA/NIC&NOC大会に参加して

木村 義(NEC文教システム事業部/大阪大学医学部保健学科研究生)
E-mail:kimura@elsd.ho.nec.co.jp


ジャズの流れる街で

 本年4月14-17日の4日間,米国ルイジアナ州ニューオリンズ市で第2回NANDA/NIC&NOC大会が開催された。ニューオリンズといえば,デキシーランドジャズを連想される方も多いだろう。実に街中にジャズがあふれている感じのする南部の街である。ルイジアナ州は,フランス系の移民によって創られ発展してきた州であり,その最もフランス的な優雅さを持っている街として,古くからニューオリンズは開拓者たちの憧れの地とされてきた。メキシコ湾に面していることもあって夏は高温多湿で観光には向いてないが,4-5月はさわやかな季節であり,アカデミックな会議を開催するにふさわしい地である。
 市の中心部にはルイジアナ州立大学があり,医学部や看護学部,附属病院などが周辺に配置されている。昼時には術衣の上に白衣をまとった職員や学生が,大勢行き来する姿があちこちで見受けられた。
 ニューオリンズで最も昔の姿を残している場所が,その名もフレンチクォーターと名づけられている一帯で,雰囲気は1800年代後半の趣きである。またシーフードが名物で,オイスターは年中食べられ,なまず料理やザリガニ料理,ロブスターなどがメニューに載せられている。フランス系移民で創られただけあって,どの店も味わいのある料理であった。
 観光案内はこのくらいにして,学会の日程だが,14日はプレコンファレンスと位置づけられ,前回と同様「1オン1Q&A」と題するコンサルテーションで,関係者と質問者の個人面談である。15-16日は教育的講演や一般発表が中心であった。最終日の17日は13時で終了したが,最後の1時間半はフリートークの時間が設けられ,代表者の6名が前方にならび(参加者と同一フロア),司会者が交通整理をするというタウンミーティング形式で行なわれた。質問あり意見あり,コメントありで,それに対して代表者たちが答えるという楽しいものであった。

看護診断分類・看護介入分類・看護成果分類

 今回の大会は,1997年11月に開かれた第1回の大会に続くもので,本格的なNANDA/NIC&NOCの相互作用の議論が行なわれる大会である。日本でもようやくNIC&NOCが「ニック・ノック」と,「ナンダ」(NANDA)と同様にカタカナで呼ばれるようになり始めた。しかし米国でも研究者たちの中でNICという名称は知られていたものの,NOCを知る人は少なく,1997年3月に「NOC」が出版されてから,急激に看護分類や文書の標準化に対する意識が高まったようである。
 NICとは看護介入分類(Nursing Intervention Classifications)の略で,通常「ニック」と呼ばれている。これは看護介入を体系化したものであり,しかもNANDAの看護診断と関連づけされている。したがって,看護診断が確定すれば関連する看護行為(介入)の中から,その診断を解決するために適した介入を選択できる仕組みになっている。分類作業は米国アイオワ州立大学看護学部の有志によって1987年から始められた。1990年からはNIH(米国立衛生研究所)や,ロックフェラー財団といった公的機関から170万ドル以上の研究費を得て研究が進められた。研究の中心となったのはマクロスキー氏(アイオワ州立大看護学部教授)とブレチェク氏(同)である。この研究結果はANA(全米看護協会)をはじめとする40以上の研究組織や機関によって妥当性の評価が行なわれ,承認を受けている。1992年に第1版が出版されてから,1997年9月に第2版を出版,1999年12月には第3版の出版が予定されている。
 これに対してNOC(Nursing Outcomes Classifications)は,「ノック」と呼ばれ看護成果分類と訳されているが,「患者目標分類」と訳されることもある。これらの異なる訳は,見方を変えただけで本来は同じ意味である。患者に現在の病態を明らかにすることができない場合は,成果としてナースが管理していくことになり,患者とのインフォームドコンセントが得られれば患者目標となる。合意が得られている場合でも評価においては成果が期待されるわけだから,結局は同じものである。最近の訳では成果分類とすることが多い。
 また,NOCはNICのプロジェクトと並行して研究されたが,出版は後になった。研究の中心となったのはのジョンソン氏(アイオワ州立大看護学部準教授)とマース氏(同教授,写真)で,第1版の出版が1997年3月,本年12月には第2版(原著)が出版される予定である。NICが「看護行為そのもの」を記述しているのに対して,NOCは「状態を表す項目を縦軸に,尺度を表す1から5までの数字を横軸に持った表形式」で構成されている。
 NICもNOCもカテゴリー分類されており,わかりやすく整理されている。最も有効な点は,NANDA看護診断ラベルとの連携が記述されていることである。NANDAのラベルに対して関連する主要なNICのラベルが列挙され,副次的に関連するラベルも並べてある。NOCの場合も同様に,NANDAのラベルに対して関連するNOCのラベルが列挙されている。NIC第2版は現在翻訳中(中木高夫訳,南江堂)であり,NOC第1版は最近出版された(藤村龍子他訳,医学書院)が,NICはまだ時間がかかりそうだ。アジアではすでに韓国でNIC第2版が翻訳出版され,NOCの出版も予定されている。韓国に比べて翻訳が遅れていることは誠に残念であるが,臨床現場でのニーズが出版社へは伝わっていないからなのかもしれない。

看護の個別性と普遍性を支えるNIC/NOC

 看護介入や患者目標は,個別性を考慮すれば当然患者ごとに異なるはずであるが,共通に使えるものも多い。また,文化や価値観の相違から介入や目標が変化することもある。したがって,これらの分類はあくまで目安であって,現場での行為を制限するものではない。日本では今まで,「標準看護計画」と称して体系化や妥当性の吟味を加えないままに,しかも疾患別に分類されていたものに対して,NIC/NOCが看護診断という看護独自の視点で分類され構成されていることは,ナースのアイデンティティを意識できる重要な要素であろう。
 個別性を言うことは,簡単なようでそれほど簡単なことではない。NICやNOCは病態生理学的,言語学的,心理学的,情報科学的に十分に検討されている。当然,統計的にも調査された結果をもとにしている。このように妥当性をチェックされている分類をまず確認してから個別性をチェックすべきである。

大会の動向と展開

 本大会の第1日目には,前回の大会と昨年のNANDA25周年の記念大会でも行なわれたことであるが,NANDA,NIC/NOCのそれぞれの代表者が壇上に立ち,これまでの成果や今後の展開について語った。NANDAは25周年を迎えたことと,新ラベルとして21,改訂ラベルとして37,削除ラベルが1あったことが報告された。また,原案ではあるもののタクソノミー IIの新原案が発表されたことも披露された。
 NICは第3版の原稿が脱稿され,433ラベルあった第2版に58ラベルが追加,また98のラベルに改訂が行なわれ,合計では486ラベルとなったことが発表された。その中でもドメインと呼ぶ領域を表すカテゴリーに「コミュニティ」が追加されたことが大きな変化であった。NOCも同様に190ラベルあった第1版に70の新たなラベルが加わり,20のラベルに改訂が行なわれ,合計では260ラベルとなったことが発表された。
 トレンドとしてはいくつかあげられるが,より積極的に「コンピュータを使った情報管理」に関心が向いてきたことが大きい。今までは分類の構築に労力の大半が費やされてきたわけだが,その作業が落ち着き始めたことも手伝って看護情報科学(Nursing Informatics)という言葉が使われ始めた。インフォマティックスと言うとわかりにくいかもしれないが,最近では「情報科学」と訳されている。要はコンピュータを用いた情報の利用技術を研究開発する分野と言えばわかりやすいであろう。今まではCPR(心肺蘇生法ではなくて,Computerized Patient Record)という言い方で一括されていたのだが,それなりに学問の1分野としての独立が認知されたと考えてよいだろう。コンピュータを道具として成り立つ学問は数多くあるが,その仲間入りをしたと言える。
 もう1つのトレンドは職種間(Interdisciplinery)のコミュニケーションにNANDA,NIC/NOCといった看護言語が大いに役立ち始めたということだ。多職種(チーム,Multidisciplinery)や多言語(Multilanguage)という用語は前回もあげられていたが,今回は一歩進んで職種間(Interdisciplinery)という言葉が多用されていた。このことは,単にチームが患者へのケアを協力して遂行するという形だけでは,実質的な協力関係が築けないことを意味している。つまり各職種がそれぞれの言語で記録していっても,同一表現に対して異なる意味を持つものが出てくることがあり,共通のプラットフォームであるはずの患者記録が,各職種ごとにバラバラに書かれていた記録を単に1か所にまとめただけになってしまう。
 前回までは,「患者情報を共有することによって多職種が協同で患者に関われる」という表現だった。しかし実質的に共有するためには,それぞれの言語間の調整(職種間の調整)が必要になり,調整のための「職種間の相互交流」をコンピュータによってサポートしようという考え方となった。この背景には,早いうちから看護の言語の標準化作業を進めてきたNANDA,NIC&NOCが,多職種の新たな言語のベースとなり始めたことがあげられる。

NDECの動向

 NDEC(看護診断拡張分類)は,昨年のNANDA25周年記念大会で正式にNANDAに組み込まれ,承認された。これを機にNDECはNANDAに吸収されるのかと思っていたが,実は存続していて活発な活動をしていたのである。
 今回の発表で明らかになったのは,NANDAへ未提出のものも含めて96ものラベルがすでに再構成されており,NDECとして別の書物を発行する意向のようだ。
 NANDA2000では,NDECが再構成したラベルがいくつか載せられているが,その緻密さを見ると,どれだけの労力をかけて検証したかが感じ取れる。今回発表した例では,NICの形式に似て出典や根拠となった研究が脚注に載せられている。おそらく出版される時は,すべてこの形式で再構成されたものが出されるのであろう。やはり1996年のピッツバーグ大会で感じた驚きとパワフルさが,そのまま継続されていたように思う。つまりNANDAはNDECの活動を承認することによって,認証機関的な立場をとったことになる。診断審議の実務は,実質NDECに移行していくのかも知れない。研究の中心となっているのはローゼンバーグ氏(アイオワ大看護学部準教授)とデラニー氏(同準教授)とディネハイ氏(同助教授)である。研究者の中にはNOCの中心人物であるマース氏やクラーク氏(英国ウェールズ大看護学部教授)といった実力者も含まれている。今後は積極的にNDECの動向も追跡せねばなるまい。

1オン1Q&A

 大会初日には,前回にも行なわれた1対1でのコンサルテーション「1オン1Q&A」を企画,30分単位の予約制で行なわれた。1番人気の「NOC」はあっというまに予約がいっぱい。どうにか,「NANDA」にはエントリーできた。もっとも会期中に主要メンバーをつかまえて個別に時間を作ることは可能だが,なかなかお互いの時間がマッチしないことを考えるとうれしいセッティングである。しかし,前回は15分単位で話が切れずにずれ込んで待たされた苦い経験から30分に変更したと思われるが,それでも短く感じた。前もって電子メールでコンタクトを取り合い,夕食をともにしながらの会談や打ち合わせを行なえたことも収穫である。
 2日目の夜にレセプションが行なわれ,ホテルの6階にあるオープンテラスのプールサイドでお互いの親睦を図ったり,情報交換も行なわれていた。

国際協力と交流

 このレセプションの時に,オランダの代表でNANDAの25周年大会で表彰されたオウド氏〔ACENDIO(看護診断介入成果欧州共同協会)理事〕が筆者にコンタクトし,「今回集まった各国のメンバーの有志で,明日ランチョン会議をしたい」との申し出があった。急なことであり,「なぜ私が」と一瞬ひるんだが,これだけ国際色のある会議なのだから,各国が協力し合うことに意義があると思い,その強い勧めに参加することにした。なお今回は,日本看護診断学会(JSND)の理事の1人である中木高夫氏(名大教授)と,同JSNDの国際委員会の委員長である江川隆子氏(阪大教授)が参加されていたので,2人に声をかけて一緒に参加することにした。
 翌日集まったメンバーは,NANDA会長のジョーンズ氏(ボストンカレッジ看護学部教授),NANDA次期会長のエイバント氏(テキサス州立大準教授),NANDA国際委員会の委員長であるフランスのボアヴェール氏(ACENDIO理事),オウド氏,ブラジルサンパウロ病院の看護部長であるバロス氏,そして中木氏,江川氏,木村のメンバーであり,あとは米国の有志3名にNANDAの雑誌の編集をしているNURSECOM社の副社長で編集長であるニール氏の合計12名であった。
 この会議では,まずジョーンズ氏から,今回集まった目的と今後の協力,そしてNANDAの雑誌である「Journal of Nursing Diagnosis」(JND)の国際版への衣替えが提案された。続いてオウド氏が,本年3月にヴェニスで行なわれた第2回ACENDIOでの成果を報告するとともに,ACENDIOの成功を得てさらなる国際協力の輪を広げたいとの意見が出されアイディアを募った。そこでは,江川氏がJNDの国際版に日本語のアブストラクトも載せたいと意向を申し出,了解を得られた。さらに,JSND発行の雑誌である「看護診断」に載せられたアブストラクトを提供できる旨を伝えた。一方でオウド氏からケーススタディを載せる案が出されたが,紙面の都合で当分見合わせることになった。
 また,筆者の提案として「JSNDのホームページ(HP)ができた暁には,今回公開されたNANDAのテストサイト(アドレス下記)にリンクを張ること」を提案し,欧州がすでに開設しているWWNDFというWeb(ウェブ)サイトとも相互にリンクを張ることを約束した。かねてよりJSNDのHPを作る前段階として,国際委員会で独自にテストサイトを設け,徐々に拡大・充実していくことを検討中であったので,図らずも海外で先に予定を公表することになってしまった。
 現在,NANDAの雑誌は,NANDAに所属していないと購読できない。図書館で取り寄せているところは閲覧が可能であるが,臨床のナースはなかなか見る機会がない。しかし,ウェブサイトというメディアを通して,臨床のナースが世界の研究者が持っている興味の対象や,研究成果,最新情報等を共有できる可能性が(著作権の問題をクリアできれば)広がるとすれば素晴らしいことだ。年々インターネットを使うナースが増加している。確かに世界となると言葉の問題は生じるが,それでも今後の可能性はきわめて大きい。

DRG,クリティカルパスウェイと看護診断

 話は変わるが,今回の大会で多く耳にしたキーワードの1つは「DRG」と,クリティカルパスウェイ(CP)である。参加者の言を借りれば,全米のほとんどの病院で採用されている「DRG」や「CP」は,看護診断を抜きに語れない。またNIC/NOCができたことにより,より多職種間のコミュニケーションが円滑になり,相互にチェック機能が働きミスの防止や質の保証ができるようになった。というのも,ナースの行動とともに,医師をはじめとするあらゆる医療従事者が患者を中心に情報を共有し,無駄の排除と質の保証,そして患者と一体になった目標管理体制が敷かれて初めて実現できるのだが,その姿は近未来の医療のあり方を象徴しているようだ。
 しかしながら,日本ではそこのところが十分に理解されないままに看護診断やCPという言葉が用いられているように感じる。確かに使い方を誤れば患者にとっては苦痛でしかないシステムになってしまうことは注意しなくてはならない。特にCPは救世主のような扱いを受けてはいるが,維持管理が重要であることを忘れてはいけない。当然のことであるが,他の施設で開発されたCPをそのまま導入するということは考えてはならない。しかしながら日本で訪問する施設のいくつかで,まさにそのまま導入しようと考えているところが少なくなかったのには,驚きを隠せなかった。
 NIC/NOCが開発されたことにより,米国ではCPが作りやすくなったと言われている。米国の学会で展示されているケアシステムには,必ずと言ってよいほどCPの編集機能が組み込まれている。このことからだけでもCPのメンテナンスが必要であることが伺い知れる。NIC/NOCを単独で使うことはない。なぜならば米国の保険業者から根拠を求められるからだ。うるさいほどに経費の節減が求められる。看護診断-介入-成果という流れがあって初めて保険業者が評価する。どれが抜けても評価すらせず,支払いを拒む。
 CPは,ある程度のルーティン化をすることによって経費の節減と質の保証を図るものである。保険業者は経費が低ければ他はどうでもよい。しかし患者はそうではない。病院側は両者の相反する要求をどちらも満足させる,少なくとも納得できる質を提供しなければ,病院経営がなりたたないのである。なぜなら,患者はよりサービス内容のよい満足度の高い施設を選ぶようになるからだ。CPは合理性を追求した結果であるから,患者側も合理的に満足度の高い施設を選ぶことは経済の原則である。

米国における看護診断

 米国における看護診断は基礎教育の中に織り込まれ,当たり前のこととして普及しているために,特に取りたてて看護診断という言葉が表に出てくることは少ない。しかし,臨床現場においては看護婦のアイデンティティを示す行為として,最も重要な役割を担っていることは言うまでもない。DRGにおいても,CPにおいても看護が関わる部分においては,看護診断ラベルが使われている。看護診断ラベルが使われているということは,定義と分類に基づいてアセスメントされたものしか使えないはずであるから,記録の上だけでなくアセスメントの中心に看護診断が存在していることと同意である。
 日本の看護界の1部で,看護診断が記録方式の1つに過ぎないという解釈のされ方をしていることは,悲しむべきことである。米国のナースは,どんなに合理性を求められても決して判断する部分,つまり診断行為を人任せにしたりはしない。コンピュータがあらゆる場所に広がっている米国でさえも,診断を自動化しようとは決して考えない。なぜならナースとしてのアイデンティティを表現できる最も重要な行為であるからだ。内外の看護系学会で発表を聞いていると,一部ではあるがその曖昧さが露呈されている。看護診断の本意が伝わらないままに言葉だけが上すべりし,誤った使われ方(ラベルだけの使用など)がされていくことは避けなければならない。

国際性がさらに高まる

 2年前の第1回NANDA,NIC/NOCの報告をした時(1998年3月30日付,本紙2283号)に比して,多少の増減はあったものの全般に国際性が広がった感じがした。参加国は,米国統治領グアムをはじめとして,以前と同様に留学生(韓国)が米国として登録したので実質11か国となり,主催者側の登録名簿では222名となった(表参照)。アジアの留学生も多く参加していた。本大会では,残念ながら日本以外のアジアの参加者が実質では多かった。まだ知られていないこともその理由の1つであろうが,研究の対象が異なるのかもしれない。何年か後に,よりよいケアを求めてアジア諸国の施設へ患者が移動する現象が起こらないことを願いたい。もちろん看護診断=よいケアとは限らないが。

参加国および参加者数
 国名参加者数









10
11
アメリカ
日本
カナダ
ブラジル
オランダ
アイスランド
グアム
フランス
イギリス
スイス
台湾
199名
6 
4 
3 
2 
2 
2 
1 
1 
1 
1 
合計(11か国) 222名

ライセンスと使用料

 前回の報告にも書いたことだが,NIC/NOCに関しては,医学出版社のモズビー社とCNC(アイオワ大看護分類センター)が50%ずつ権利を所有しており,これらの使用に関しては制限を設けている。分類そのものは出版されているので,そもそも無断転載や無断コピーはできないが,看護記録などの紙媒体で使用する場合には自由に使うことができる。しかし,コンピュータをはじめとする情報機器にインプットした時点で,ライセンスが発生する。英語版の使用料はNIC/NOCそれぞれに,1人5ドル(約600円)である。同じバージョンを使う限りこれ1回だけでよいが,バージョンが変わる度に同額を払わなければならない。日本語版については翻訳権との関係が発生するので,現時点でいくらに設定されるかは何とも言えない。翻訳権を無視して独自に翻訳して使用することは許されない。ちなみに英語版では,1000名をまとめて登録すれば1人当たり2ドルまで減額される特典も設けられている。
 約15年前に発覚した米国IBM社の基本ソフトの無断使用に関して,日本のコンピュータメーカーが膨大なライセンス料を払わせられることになったニュースは記憶に新しい。彼らは,過去にさかのぼってライセンス料を払わせられ,その後の情報公開も正規の手続きを取らずして入手できなくなった。研究結果がライセンスを要求されるという今までにはなかった形態ではあるが,これからは増えることになろう。
 また,遺伝情報に関しては特許が認められ多くの企業が覇権を競っている。米国では「遺伝看護学」という学問が新設されはじめたので,看護も自分の研究を護る意味でも他人事ではなくなってくるに違いない。

おわりに

 締めくくりに一言あげておきたい。看護の分野は今まで,医学の進歩の速さについていくのに精一杯で,自分の足元を固めることに一部の研究者を除き目を向けてこなかったように思う。情報が瞬きするうちに世界中をめぐってしまうような世の中になって,開発途上国が一気に世界レベルに達する技術や知識を得ることが可能になった現在,クライエント(医療サービスを受ける側)も同様に情報収集が可能になったと意識しなければならない。看護が知識や技術だけではないことも承知した上で,看護の明るい将来を夢見,願っている。
ホームページアドレス
NANDAテストサイト:http://www.proaccess.net/test/nanda/
アイオワ大学看護学部:http://www.nursing.uiowa.edu/