医学界新聞

 

合格体験記


結果的に役立ったケーススタディ

草場 鉄周(京大卒)

 最初に国試を意識したのは,5年生の初頭です。ただ,少し過去問を解いてみた時に,思考プロセスよりも正答という結果だけに目がいく暗記中心の勉強になると感じて,まったく手をつけずにポリクリとケーススタディ勉強会を中心とした生活を6年生の夏まで送りました。そして,夏は内外の病院を見学して卒後の進路のための情報を蓄積しました。
 秋の卒業試験では,内科・外科以外の臨床各科(耳鼻科・皮膚科・眼科など)のプライマリケアに関する知識習得を目標にして各科の教科書をじっくり読む一方で,アメリカの臨床系国家試験(USMLE Step2)対策である「Family Practice Review」(Mosby社)を勉強会メンバーとともに読む毎日で,国家試験には手をつけていませんでした。
 年末年始になって,やっと本格的な国試の勉強を始めました。まずはなじみの薄い公衆衛生の勉強を終え,1月半ばから50日ぐらいかけて,15年分の過去問をひたすら解いていきました。解いていく中で,出題されるポイントが自然とわかってくると同時に,国試の複雑な症例問題と言えど,勉強会で身につけた臨床医学の基礎的な知識を組み合わせていけば,時間はかかるものの,十分に解けることもわかってきました。
 3月初頭に一通り過去問を解き終えたあとは,ざっと知識を整理しつつ,必修問題対策としては救急医療の実践的な本を読んで現場の医療の感覚を思い出し,3月20-21日の本番に臨みました。結果的には,全体で85%,必修問題は96%の得点率で合格しました。

国試改革も視野に入れて

 受験し終えて感じたことは,「1つの疾患について深く」から「ある所見から幅広く幾つかの疾患を」という方向へ,この2-3年のうちに問題内容が大きく変わってきたことです。そうした変化を認識していなかった僕にとって,鑑別診断を大事にする勉強会が「暗記中心」と思い込んでいた国試に対して非常に役に立ったことは嬉しい誤算でした。
 特に,今回の国試で合格率低下の大きな原因になったと思われる必修問題では,1つの疾患をじっくり学ぶ勉強法だけでは,正解できないのみならず,禁忌肢を選ぶ可能性すら高くなるでしょう。再来年の国試改革による必修問題の強化を視野に入れれば,ケーススタディを通じて臨床の基礎となる考え方を勉強をしておいたほうが,遠回りのように見えて実は国試合格への近道だと感じています。土台さえ作っておけば,細かな知識はいくらでも直前に積み上げることができます。過去問に惑わされることなく,病態生理と鑑別診断を中心とした臨床医学の勉強を大事にしてください。


やるべきことの優先順位を考えよう

志水 薫(信州大卒)

自分の力を信じよう

 国家試験の勉強をする時にまず大切なのは,長丁場だと認識することです。1年以上先の試験となると現実感がないために,何となくやってしまい,その結果,力もついていないということになりかねません。かといって,短期間にこなすには全体量が多すぎます。ですから,早いうちから先輩や合格体験記などから情報を得て,ある程度大まかな計画を立てることが有用です。そして,その計画は無理のないものにすることです。5-6年生では臨床実習や,卒業試験もあります。常に国試の勉強を同じペースで続けられるわけでもありません。その時にやるべきことの優先順位を考え,国家試験の勉強をどう組み込むかを,各自の大学のカリキュラムに合わせて決めるとよいでしょう。
 さらに,これが最も大切ですが,「自分は必ず合格する」と信じることです。勉強する中で,どうにもやる気が出なかったり,覚えることが単調に思えたり,あれもこれもと焦ったりする時がたくさんあります。そんな時に大事なのは,自分の力を信じることです。息抜きをする時ひとつとっても,こんなことしていてもいいのかなどと中途半端に悩まないで,また新たな気持ちで勉強に復帰できます。

どんな勉強が必要か

 具体的な勉強法ですが,5年生時には,臨床実習を中心にしていました。国試の勉強は,秋から週に1-2度の勉強会がほとんどすべてでした。5年生の間は,知識を広げるよりも深く学ぶことを心がけました。なぜだろうと思ったことは,納得がいくまで十分追究しておくことが,後々役立ちます。目先の得点アップにとらわれないことです。使う教科書も,一度はきちんとしたものに目を通しておいたほうがよいと思います。勉強会は,3-5人のグループで,臨床問題中心でしたが,できれば自分で一般問題も並行して解いておくとよいでしょう。まとめを作る場合,あまり最初から完璧なものをめざそうとせず,わかりにくかったことを書き留めたり,よくまとまっている図表を教科書からひいておくだけでも十分です。
 私の周囲では6年生の夏休み頃から本格的に勉強を始めた人が多いようです。夏休み明けまでに過去問を一通り解き終えておくといいでしょう。臨床問題は,最低3回解きます。繰り返すことで問題のパターンも定着します。卒業試験の時期(私の大学では10月-12月末)には,国試の勉強からは一旦離れて,そちらに専念しました。内容も形式も違うため,とまどいもありましたが,国試の勉強で抜け落ちていた部分の最終チェックもできました。割り切って集中するほうが得策です。
 マイナー科目は,勉強会で並行して進めているグループもありましたが,そうでなければ臨床実習で回っている時にまとめて過去問を解いておくのが効率的です。
 勉強の中心は過去問となり,またそうしておけば大きくはずれることはありません。ただし,新しい問題に対する勘が鈍りがちなので,模試などを利用しました。また,X線などの画像も手薄になりますから,普段からできるだけ目にしておき,実習などでも人と話して理解を深めておくことが大切です。
 最終的に受験生にとって一番心配になるのがD問題です。過去問の数も限られており,勉強もしにくいのです。対策としてはとにかくたくさんの問題を解くことになりますが,常識的にものを考える癖をつけておくこと,本番ではこれがとても重要でした。
 最後になりましたが,国試の勉強は,皆と同じことをやるのが基本です。自分ならこう考える,ひょっとしたらこうではないか,と考える本来の勉強の楽しさからは離れたものです。つまらないかもしれませんが,そこは割り切って,試験に対応できる力を身につけてください。皆さんが,来春合格されることを,心よりお祈りしています。