医学界新聞

 

第24回日本脳卒中学会が開催される


 脳卒中は,寝たきり高齢者の原因の4割を占め,高騰化する日本の医療費に占める割合は第1位である。これらを背景に一昨年には「日本脳卒中協会」が設立。また,昨年開催された第23回日本脳卒中学会(1998年6月25-26日,札幌市)では,「脳卒中の患者は,今後も高齢化に伴いさらに増加することが予想される」ことから,ストロークケアユニット(脳卒中病棟:SCU)の各地域への設置や脳卒中専門医の養成,ブレインアタック(脳発作)としての位置づけと総合対策が急がれるとして話題となった。
 このような中,第24回日本脳卒中学会が,さる4月20-22日の3日間,篠原幸人会長(東海大教授)のもと,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。

脳卒中専門内科医と外科医の強調をめざして

 なお,同会場において前日から第28回日本脳卒中の外科学会(会長=横市大教授 山本勇夫氏)が開催されており,「脳卒中の外科的治療は今や特殊な治療ではなく,脳卒中治療法の1つの選択であり,近年の進歩した脳卒中外科や脳血管外科は外科医のみが討議すればよいというのではない」(篠原会長)との主旨から,本学会では初日冒頭から日本脳卒中の外科学会との合同カンファレンス会「内科医・外科医はどれだけ理解しているか-脳卒中の治療」(座長=島根医大小林祥泰氏,日本医大橋本信夫氏)を企画。脳出血,内頸動脈狭窄・閉塞,ウイリス動脈輪閉塞症に関して,内科・外科の両側面から語られた。
 なお,日本脳卒中学会では,会長講演「虚血性脳血管障害急性期の病態生理研究とその臨床応用」や外国人演者による特別講演の他,シンポジウム(1)家族性脳血管障害と遺伝・遺伝子異常,(2)脳卒中症候の臨床評価-脳卒中重症度scale(急性期)を中心に,(3)虚血性脳血管障害で最近注目されている血液・危険因子,(4)脳血管外科の最近のトピックスが企画された。また,最終演題としてパネルディスカッション「本邦脳卒中の現状把握と将来における問題点」(座長=国立循環器病センター 山口武典氏,篠原幸人氏)が開催されたが,本パネルは昨年の「日本の脳卒中医療の課題と展望」(座長=山口武典氏,札幌医大 端和夫氏)に続くものとして,「昨年,十分に論議つくせなかった問題を,今回は官・産・学のインテグレーションをめざして再討議したい」(篠原会長)と位置づけた。
 また,同パネル終了後には,「日本脳卒中学会・国際脳卒中学会リージョナルミーティング-合同シンポジウム“Stroke in Developing Countries”」が開催された。

脳卒中の現状把握と将来の問題

 パネル「本邦脳卒中の現状把握と将来における問題点」では,「特に厚生省の脳卒中対策に関する考えを聞きたい」(篠原会長)とのことで,まず最初に伊藤雅治氏(厚生省保健医務局)が登壇した。伊藤氏は,1次予防から3次予防までの「脳卒中対策」の枠組みや1997年からの「新寝たきりゼロ作戦」,厚生省内に設置された「脳卒中対策に関する検討会」などついて解説。「医療関係者・機関が現状を把握し,予防のための脳卒中の知識と救急対応の必要性をもっと熟知すべき」と述べた。その上で,脳卒中対策の展望として,(1)危険因子の回避による脳卒中予防をめざした保健サービスの提供,(2)急性期医療施設の整備,(3)血栓溶解剤(t-PA),低体温療法等に発症後急性期治療の評価,(4)リハビリテーションによる後遺症の回避,(5)着実な脳卒中研究の推進の5点をあげた。
 教育の現状については端和夫氏が「国家試験に脳卒中に関する問題は320問中わずか3題にすぎない」と報告,「脳卒中は医学界の中でも重要視されていないのではないか」とし,卒前・卒後教育に関する改善への提言を行なった。また,教育に関しては松本昌泰氏(阪大)が追加発言し,「教育スタッフがいない」現状を憂いた。また,中山博文氏(国立大阪病院)はイギリスのSCUやアメリカのブレインアタックキャンペーンの成果など,諸外国の実情を伝えた。さらに,小濱啓次氏(川崎医大)は,救急医療の立場から「救急医と専門医」に関し,「専門医にとって救急医はトリアージだけを行ない,専門医に紹介してくれるのが理想的」など,救急医療の現状を報告した。
 その後の総合討論の場では,SCUの設置基準に関し,「都市型と地方型では違う」「救急救命センターか総合病院か」などが議論されるとともに,t-PAやリハビリテーションと脳卒中の連携に関する問題も話題となった。
 今回のパネルでの白熱した議論からは,脳卒中専門医の育成など,より「脳卒中医療の重要性」が示唆されるともに,国の対策確立が急務であることが伝わる意義ある内容であった。