医学界新聞

 

特集 第25回日本医学会総会

パネル「新しい医療の形態」


最新の遠隔医療システムを紹介

 3日目に行なわれた,パネル「新しい医療の形態-遠隔医療」(司会=国立大蔵病院 開原成允氏,京府医大 前田知穂氏)では,臨床的にも認められつつある遠隔医療の最先端の情報がもたらされた。
 遠隔画像診断の経済効果に争点を当てた前田氏は,高度技術を応用した遠隔画像診断の普及に関して口演。「経済効果の推定には,定量的・定性的な評価を考慮に入れた医療経済モデルが必要だが,送信側と受信側の責任の所在の確定や,タイムコストの測定などは困難」とした上で,「救急では,経済効果も医療効果も大きい。遠隔での放射線診断・治療は,医療効果は大きいがコストがかかる」と調査結果を発表。また,普及に向けて,人的資源の効率的活用と診療報酬化の実施を求めた。

新しい技術が続々と登場

 続く澤井高志氏(岩手医大)は,わが国でも少しづつ増加しているテレパソロジー(遠隔病理診断)について,現状と問題点を指摘。手術中の迅速な診断やカンファレンスを目的に行なわれているテレパソロジーは,(1)腫瘍の性質の判定,(2)転移の確認,(3)切除断端の確認,といった迅速診断などに有用であることを示し,「81%の施設で導入したいと回答があった」と発表。ただし,コスト高,プライバシーの保護,診断側の負担,診断の正確性など,実際に広く普及させるための問題点の多さも語った。
 現在臨床試験中である,在宅における妊産婦管理を目的とした周産期遠隔医療システムについては,北川道弘氏(国立大蔵病院)が口演。「テレビ電話を使用したこのシステムは,外来通院回数を減少させるだけでなく,顔が見えることにより妊婦の安心感が増大する。また,費用負担の増加も見られない」と,有用性の高さを主張した。
 一方,大上正裕氏(慶大)は,モニター画面を見ながら手術を行なう内視鏡外科手術の特性を活かした,「遠隔手術指導システム」を紹介。内視鏡外科手術は,視覚や動作に制限があるため,非常に難しい手術とされており,コストも高く,トレーニングをすることさえ難しいので,地域格差の大きい術式の1つである。しかし,遠隔手術指導システムを使えば,遠隔地にいる指導医と視野を共有し,指導を受けながら手術が行なえるというものである。大上氏は,「現在では,国際遠隔医療カンファレンスも進んできており,低コストと,高品質な画像が実現すれば,低侵襲の内視鏡外科手術を安全に提供できる」と将来の展望も述べた。

国際応用も

 最後に登壇した秋山昌範氏(国立国際医療センター)は,遠隔医療の国際応用について,国際医療協力に十分な有用性があると発表。特に,「電気も通っていないような僻地で大きな効果をあげた」と語り,現在,衛生通信やインターネットとの組み合わせも構想中であることを示した。
 総合討論では,「遠隔手術指導システム」の普及が今後の外科手術に与える影響や,画像の色の問題などに関して討論された。