医学界新聞

 

「社会とともにあゆむ医学-開かれた医療の世紀へ」のメインテーマのもとに

第25回日本医学会総会が開かれる


 100年におよぶ歴史を持ち,かつ今世紀最後の総会ともなる第25回日本医学会総会(会頭=高久史麿自治医大学長)が,さる4月2-4日,東京の東京国際フォーラム他2会場で,また医学展示・博覧会が3月30日-4月8日,東京国際展示場において開催された。
 今回の総会は,「今世紀中における医学の発展を振り返り,同時にきたる21世紀のわが国の医学・医療のあり方を皆で考える絶好の機会である」(同総会学術講演要旨より)と位置づけて,メインテーマを「社会とともにあゆむ医学-開かれた医療の世紀へ」と掲げ,2万6千余名が一堂に会した。一方,医学展示・博覧会では,医学展示部門(登録会員向け)の他に,博覧会部門(一般公開)として「医学博覧会-“生命(いのち)”の博覧会」が企画され,31万7千余名におよぶ史上最多の参加者を得て,盛会裡に閉会した。


 1960年以来の天皇・皇后両陛下の行幸啓となった総会第1日目の開会式では,伊藤正男副会頭の開会宣言,森亘日本医学会会長の開会の辞,矢崎義雄準備委員長の経過報告,高久史麿会頭の式辞に引き続いて,天皇陛下のお言葉,小渕恵三内閣総理大臣,有馬朗人文部大臣,坪井栄孝日本医師会会長から祝辞が述べられた。

広範多岐にわたる学術講演

 開会式終了後に行なわれた伊藤正男副会頭(理化研脳科学総合研究センター所長)による開会講演「医学の新たな枠組みを求めて」をはじめ,会頭講演「社会とともにあゆむ医学」,立花隆氏(評論家)による閉会講演「医学の人間化と非人間化」の他,第一線の研究者による特別講演12題,テーマシリーズ30題,さらに25の分野から構成された学術講演が3日間にわたって発表された。
 また,急遽総会2日目に企画された「緊急シンポジウム:臓器移植緊急報告会」(司会=島崎修次日本救急医学会理事長,矢崎義雄日本循環器学会理事長)では,先ごろ実施されたわが国初の“脳死者からの臓器移植”が取り上げられ,(1)移植ネットワークの立場から(東女医大 寺岡彗氏),(2)心臓移植の立場から(阪大 松田暉氏),(3)肝臓移植の立場から(信州大 川崎誠次氏),(4)一般の立場から(作家 中島みち氏),の4氏によってこの問題をめぐる諸課題が検討された。
 一方,学術講演と並ぶ柱となった医学展示・博覧会は前述のように,史上最多の参加者を集めた。特にメインテーマ「社会とともにあゆむ医学-開かれた医療の世紀へ」を具現した形になった「“生命”(いのち)の博覧会」では,第1館「人と病気との戦い」,第2館「病院探検」,第3館「安全都市・在宅ケア」,第4館「世界に広がる医療」,第5館「市民の広場」から構成され,21題におよぶ「市民公開講座」が企画された。

次回は杉岡会頭のもと福岡で

 閉会式で高久会頭は,「“20世紀を振り返り,21世紀を展望する”という意図は,ある程度達成できたように思う」と述べるともに,次回総会への新たな期待を語った。
 なお,次回第26回日本医学会総会は杉岡洋一会頭(九大総長),平野実副会頭(久留米大学長),片山仁副会頭(順大学長),名和田新準備委員長(九大教授・第3内科)のもとで,福岡市において開催される。

 第25回日本医学会総会の詳報は,本紙次号(5月17日付)に掲載予定。