医学界新聞

 

医療・看護事故防止のための緊急提言

日本看護協会・日本医療労働組合連合会が発表


 本年1月に起きた横浜市大病院での手術患者取り違え事故以降,都立広尾病院,市立泉佐野病院,最近では沼津市民病院などでの医療事故が明らかとされてきた。これら頻発する医療事故は,看護にとっての深刻な問題として,さる3月24日に日本医療労働組合連合会(医労連;江尻尚子委員長)は,「医療・看護事故の再発防止のための緊急提言」を発表。また,4月2日には日本看護協会(看護協会;見藤隆子会長)が,「医療現場のリスクマネジメントと事故防止について-日本看護協会の提言」を,先の横浜市大病院の事故に関する「職能団体としての見解」(本紙2327号参照)に引き続き公表した。
 「一連の医療事故は,『患者の顔が見える医療・看護』が,医療現場から奪われてきた結果でもある」との見解から,「ふたたび不幸な事故を発生させないため,そして『国民の命と人権』を守る医療を実現するために」とする医労連の提言を下記(A)する。なお医労連は,この提言内容を同日づけで「要請書」とし,宮下創平厚生大臣宛に提出した。
 一方看護協会は,「医療財政の悪化により,医療現場は急速に効率化を迫られている。事故発生の背景を検討した結果,事故のいくつかはこの変化に医療機関の体制が追いついていないことが原因とわかった」として,「全国の医療関係者や行政当局は,事故の再発防止に真摯に取り組まねばならない」と,下記(B・C)の「緊急提言および具体的な取組」を発表。同時に,事故防止への課題についても触れた(下記D)。なお,看護協会は「リスクマネジメント委員会」の設置を決め,早々に稼動を開始し,早ければ本年6月には委員会としての意見をまとめる予定だ。

(A)【医療・看護事故の再発防止のための緊急提言】(医労連)
1.医師や医療従事者が安全を確保しながら業務が遂行できる適切な人員配置を,医療法や診療報酬制度で保障すること。外来・手術室の看護業務を診療報酬上評価すること
2.看護職員の人員配置を是正し,患者対看護職員の配置「1.5対1」「1対1」を新設し,看護職員の大幅増員と夜勤改善(3人以上・月6回以内の実現)を行なうこと
3.国・自治体と医療関係者が協力して,医療事故の事例を集積・分析し,今後の事故防止の対策を確立し,必要な情報を国民に公開すること
4.国・自治体は,医療事故防止のためのチェック機関を整備し,事故防止のマニュアルの作成,それが有効に実施されうる条件整備,教育の充実など施策を強化すること
5.医療機関に「事故防止委員会(仮称)」の設置と担当者の配置を義務づけ,日常的なチェックや定期的な研修を行なうこと
6.「看護婦確保法」の基本方針を実行性のあるものに改正すること。事故防止対策を盛り込んだ「新看護婦需給計画」を策定し,200万人以上の看護体制を実現すること
7.医療保険制度や医療提供体制改革の検討にあたっては,「患者の安全と人権」を最優先することを基本姿勢にして進めること

(B)【日本看護協会の4つの緊急提言】
(1)看護職員等マンパワーの適正配置を図る
(2)看護職員の卒後研修を制度化する
(3)24時間継続したチーム医療体制を確立する
(4)医療機関内における医療従事者の業務範囲と責任を明確にする(詳細略)

(C)【日本看護協会の当面の5つの具体的な取組】
(1)リスクマネジメント委員会(仮称)の設置
(2)リスクマネジメントに関する業務のガイドラインの作成と普及
(3)看護職個人や医療機関に対する支援の強化
(4)医療機器・器材の安全管理とその開発について医療機器メーカー等への提案活動
(5)市民からの意見や相談への対応

(D)【最近の医療事故発生の背景と事故防止への課題】(看護協会)
I 医療現場の変化
(次のような医療現場の変化を前提とした安全・事故防止システムの構築が不可欠)
(1)看護の高速回転状況
(2)患者の高齢化
(3)勤務体制の変化
(4)業務遂行形態の変化
II 予防的対処のシステム化を(課題)
(1)組織的対処
(2)事故リスク分析とそれに基づく対処
(3)基本的な手順遵守の徹底
(4)チーム医療・他部門他職種の協動を前提とした確認システムの構築
(5)薬剤部門との業務分担・協動による対処
(6)器具・器材に関連した課題(詳細略)

〔編集室より〕
上記に関する詳しい内容は下記まで。
◆医労連
TEL(03)3875-5871/FAX(03)3875-6270
◆看護協会広報部
TEL(03)3400-0696/FAX(03)3400-8336