医学界新聞

 

実践経験から学びつつ探る「看護の主体性」

第6回看護職の主体性に関する総合シンポジウム開催


 さる2月18-19日の両日,第6回看護職の主体性に関する総合シンポジウムが,小島通代委員長(東大教授)のもと,東京の東京大学山上会館で開催された。
 同シンポジウムは,1994年から3年間,国際共同シンポジウムとして「診療の補助における看護婦のジレンマ」をテーマに続けてきたもの。ワークショップ(グループディスカッション)を中心に,「医師-看護婦間のジレンマ」の問題や課題を本音で語るというプログラムは,多くの参加者から支持され,継続開催希望の声が強いことから,4回目以降は「国際」の冠がとれ,「看護の主体性」を前面に出しての開催となっている。なお,今回のテーマは,「看護職が主体的に動くことでの医療システムへの影響や意味を,実践経験から学びつつ探る」ことを目的に,昨年に引き続き「看護職が主体的に動くと医療のシステムはこう変わる」とした(本紙2面に掲載の小島氏による「主体性から『互尊』へ」参照)。

実践経験をもとにグループで検討

 今シンポジウムでは,8題の看護職の主体的な実践経験の演題発表後に,8グループに分かれた参加者によるグループディスカッションが行なわれた。
 その中で,林幸子氏(中部労災病院)は,HCU(High Care Unit)からの退室を待ち望んだ23歳の脊髄損傷・呼吸麻痺の男性患者との52日間の取り組みを発表。
 林氏が所属する病棟は混合病棟だが,1995年にHCUを2床新設。病院(670床)にはICU・CCUの設備がなく,HCUが院内術後患者を受け入れている。そのような背景の中,呼吸状態悪化,整復目的で他院から転院し,頸椎後方固定術を施行した患者が入室,その後死に至るまで2床のうちの1床を独占することとなった。
 林氏は,「術後の患者は奇跡が起きて動けると信じていた。だが,自分の思いが通らない,家族との面会が制限されていることからヒステリーを起こすなど,患者,家族にジレンマがあった」と述べ,一方で「いつになったらHCUを利用できるのか」「退室させたいが一般病棟での管理は無理」という医師や看護婦のジレンマもあったことを報告。しかし,看護部と医師との話し合いが行なわれ,一般病棟でのサポート体制が確認された直後に患者は死亡した。
 林氏は,「このケースから,管理体制の中にセクショナリズムがあることを実感した。関連する職種間の話し合いの重要であり,医師との協調が,組織の中の看護婦としての責任」と語ったが,医療現場で直面するジレンマについては,その後のグループ討議でも話題となった。
 その他には,昨年,看護部の要望から年末年始の休日の1日を臨時外来診療日とした経緯を発表した札幌市の愛心メモリアル病院の佐藤陸子氏は,「土曜外来診療開始への取り組み」を発表。さらに,聖隷浜松病院では,「1997年から病院独自の『認定訪問看護婦』の研修をはじめた」と報告し,現在は外来など院内各科で活用されていることが事例を通して紹介された。

小島委員長による退官記念講演

 同シンポジウムでは吉川弘之氏(日本学術会議会長)の特別講演や,パネルディスカッション「看護職が主体的に動くと医療のシステムはこう変わる」も企画された。
 なお初日には,シンポジウムのプログラムの一部として,本年3月に東大教授退官を迎える小島委員長の最終講義「看護におけるProactiveな考え方とその実行」が組み入れられた。この講義で小島氏は,看護のめざすところは「患者の安心と満足」と指摘する一方,「看護業務と医師の指示の関係」における持論を解説。最終講義のまとめにあたっては,「健康原理の追究が看護教育には求められる。また,フィジカルアセスメントの能力と心理面の探究が,卒後の看護職には必要とされる」と述べた。