医学界新聞

今の教育に必要なものは何か

谷亀光則氏(東海大腎代謝内科講師)に聞く


 ミシガン大,UCLAの2大学に計3週間,医学教育視察を行なったが,最も強く感じたのは,よりよい医学教育を施そうとする「責任(responsibility)」あるいは「責任感」だ。
◆ファカルティ(教育者)はよい医師を育てるための責任から,いろいろなプログラムを考え,実行している
◆アテンディング(指導医)はその実行に責任を持ち,レジデント,インターン,学生を指導する。そして,決して叱らない
◆レジデントは患者・自分より若手の医師・学生の教育の責任を持ち,学生は,自分の担当患者の診療と自分の勉学に責任を持つ

 彼らはお互いに相互評価されるため,無責任な言動をしているとアテンディングでさえ,その地位を追われることがある。また,教員への評価のあり方は驚くほど徹底しており,通常,専任の評価担当者と専任の事務職員がいる。アテンディングは学生からの評価でメンバーが決まり,メンバーに選ばれることが非常に名誉なこととなっている。また,米国の教員たちが教育にあたるのは,1年間に2か月ほどの期間(他の期間は,臨床や研究を行なう)であり,通年で指導を行なっている日本の教員とは事情が異なる。日本では,臨床も,研究も,教育も同時にやらなければならず,相対的に自分の昇進には影響のない教育がおざなりにされがちだ。
 日本においてもよい医学教育を実践するためには,常勤医師,研修医,学生が互いに評価を行ない,またお互いにフィードバックをして,よい意味での緊張感を保つことがまず第一に必要だ。また,学ぶ学生の側のモチベーションも大切だが,教える教員の側のモチベーションも大切。学内での教員の昇進については,現在のように研究業績に偏重した評価ではなく,教育能力,教育成果をも評価し,教育が報われる形にしないと,教員の側もなかなか教育に熱をいれるようにはならない。

(談)