医学界新聞

大詰めを迎えた厚生省「准看護婦に関する検討会」

有力となった国家試験の1本化と准看教育カリキュラム2000時間


 1996年12月20日付の厚生省「准看護婦問題調査検討会報告書」を受けて,昨(1998)年3月より厚生省は,「准看護婦の資質の向上に関する検討会」(座長=山梨県立看護短大学長 松野かほる氏)と「准看護婦の移行教育に関する検討会」(座長=東海大医学部長 黒川清氏)の2つの検討会を開催。前者においては,これまで主に准看教育および2年課程の教育の現状把握に関し,就労との関連などの問題がフリーディスカッションされ,後者では准看護婦から看護婦への移行教育における対象者,実施の期間・主体・方法,国家試験,学習支援体制などの議論を行ない,准看護婦問題の今後の対応が審議されてきた。
 なお検討会においては,日本看護協会から「移行教育は准看護婦養成を停止してから行なうべき」との意見が出されたが,改めて「検討会は准看護婦養成停止を前提としたものではない」との見解が事務局(厚生省)から示された。また,看護婦国家試験については,通常の国家試験と時限での移行教育修了者国家試験の2本立ての検討が行なわれたが,日本看護協会は「国家試験1本化」を堅持。これに対し日本医療労働組合連合会(医労連)などは,宮下創平厚生大臣宛に実質「2本立て」とする旨の要請書を提出した(下記参照)。

准看制度はこのまま存続の方向性

 今年に入り,両検討会はさる2月5日に「第9回移行教育に関する検討会」が,同25日には「第5回資質の向上に関する検討会」を開催した。
 前者では,1月22日に開かれた第8回検討会において,問題となっていた国家試験の2本立てに関して,「新たな差別を生む」「一定水準を持った看護婦養成の趣旨から反する」などの意見が委員から出された。また,厚生省側からは「移行教育だから国家試験の内容から外れる,ということはない」との見解が示されたため,事実上「国家試験は1本化」が有力となった。
 後者においては,准看教育におけるカリキュラムや教育内容,教員数,試験のあり方などが話し合われたが,教育内容については「准看護婦としての必要な知識,技術,判断力を習得するには現行の1500時間では不足。2000時間が望ましい」との意見が主流を占め,教員数については各専門領域1名,教務主任1名の5名を妥当とする意見が大勢を占めた。なお,次回の検討会ではカリキュラム案の具体的検討が行なわれることが確認されたが,准看制度はこのまま存続の可能性が強まったといえる。
 なお今後,「移行教育に関する検討会」は3月10日に,「資質の向上に関する検討会」は2月26日に開催の予定。准看護婦問題もいよいよ最終段階に入った。

〔各団体の厚生大臣宛要請書の骨子〕
(1)医労連(1998年12月9日付)
 移行教育の対象者は5年以上の就業経験を持つ准看護婦で,実施期間は7-10年の時限とし,国家試験は移行教育の内容に即したものとすること
(2)日本看護学会協議会(同12月4日付)
 妥当性に欠ける試験問題の是正に努め,4年制大学から2年課程での教育に十分配慮した試験問題の出題に努められたい
(3)日本労働組合連合会(同12月17日付)
 准看護婦の養成停止・看護制度の1本化を明確にし,看護婦になるための移行教育を早急に実施すること。国家試験は移行教育に沿った内容とする

〔参考〕
(1)日本看護協会ニュース(99年1月15日付)
 本会は「准看護婦養成停止と移行教育はワンセットで考えるべきものであり,養成停止なき移行教育はありえない」と強く主張している
(2)第7回全国准看護婦・准看護士看護研究会集会宣言より(99年1月31日付)
 准看護婦制度を廃止し看護制度1本化を実現する必要がある。廃止後の移行教育は,何らかの方策をもって全員国家登録の看護婦(士)へ移行させることを勝ち取りたい

〔編集室より〕
 「看護教育」(医学書院発行)では,厚生省が1996年12月に出した「准看護婦問題調査検討会報告書」以降,准看護婦問題に着目した「『准看報告書』以降の看護教育制度をめぐって」を1997年より連載している。連載にあたっては,識者による解説や上記に紹介したような「准看護婦の資質の向上に関する検討会」および「准看護婦の移行教育に関する検討会」の議事要旨なども掲載している。