医学界新聞

「成熟社会における看護学のデザイン」をテーマに

第18回日本看護科学学会が開催される


 昨年12月3-4日の両日,第18回日本看護科学学会が,中島紀恵子会長(北海道医療大学部長)のもと,「成熟社会における看護学のデザイン」をメインテーマに掲げ,札幌市の北海道厚生年金会館を主会場に開催された。奇しくも,同学会が主催した昨秋の「日本看護科学学会第3回国際学術集会」が台風襲来で幕を開けたのに似て,今学会が開かれた札幌市は,気象観測史上最も早い積雪と最低気温が記録され,雪に映える大通り公園のイルミネーションに迎えられる恰好となった(関連記事)。

多彩なプログラムが展開された2日間

 今学会では,会長講演「多様な職種間連携の脅威と刷新」(中島紀恵子氏)や特別講演「時代を読み解く」(北大・法 中村研一氏)の他,シンポジウムがI「文化に根ざした実践知の鉱脈-看護学をデザインするために」(座長=神戸市看護大学長 中西睦子氏,横市大看護短大 武田宜子氏),II「看護における『時』」(座長=高知女子大 野嶋佐由美氏,北海道医療大 高田早苗氏),III「看護実践から政策へのエンパワーメント」(座長=兵庫県立看護大学長 南裕子氏)の3題。また,同学会では恒例となった交流集会は,(1)カオスは看護に何をもたらすか,(2)グランデットセオリーアプローチを用いた研究の実際,(3)看護における質的研究の選択肢と選択の合理的根拠(4面に報告記事を掲載),(4)看護技術検証のための研究方法などが7セクションで行なわれた他,ワークショップは実際にベンチレーターを使用している患者の参加を得て議論がなされた「成熟社会を担う市民活動・多様化する専門職との連携」(コーディネーター=東札幌病院 濱口恵子氏,天使女子短大 菅原邦子氏)と,「看護セラピー-研究成果と手技の実際を通して適用の可能性を探る」(コーディネーター=群馬大 小板橋喜久代氏)の2題が企画。さらに一般演題は,口演,示説を含め197題におよぶなど,全国から約1800人の参加の中,多彩なプログラムが2日間にわたり行なわれた。

研究の成果を政策へ反映させる

 シンポジウムIIIには,石垣靖子氏(東札幌病院),高橋道子氏(福祉の家「西荻窪」),久常節子氏(厚生省健康政策局),見藤隆子氏(日本看護協会長)の4氏が登壇。
 医療現場の立場から,石垣氏はこれからのコミュニティケアのあり方を論じ,介護福祉と人権問題の視点からは高橋氏が発言。一方,久常氏は厚生省内の検討会の動きを紹介するとともに,「看護協会の会長,副会長は専従となり,政治的にもっと力をつけてほしい」と発言。見藤氏は「監督機関に看護職の上級職(キャリア)を」と,政策に直接関与できる職の確保の必要性を述べた。また後者2氏は,移行教育などが論議されている准看問題に関して,立場を違えての相対する発言を行なった。
 看護政策に向けては,「ロビー活動を含めてもっと看護から声を発することが必要」との意見もあったが,司会の南氏は,「学会として政策提言することが重要。実践からの研究成果を,政策に反映させる方策が必要な時代に来ている」とまとめた。