医学界新聞

医療職だからできる貴重な体験を

ジャン=マルク・セラファン(国境なき医師団・パリ本部)


 国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres:MSF)は,世界19か国に支部を持ち,年間約3000人ものボランティアが,60以上の国々で医療援助を行なっている。  昨年9月から10月にかけて,日本の医師・看護職らにも参加を求めるべく,MSFフランス(パリ)本部のリクルート部門の責任者であるジャン=マルク・セラファン(Jean-Marc Serafin)氏が来日した。本紙では,セラファン氏からのメッセージを掲載する。

専門能力と経験を生かすボランティアを募集

 MSFは,1971年にフランスで設立された緊急医療援助団体です。災害に苦しむ人すべてに人種,宗教,政治などの差別を超えて援助を提供するという理念のもと,現在60か国以上に年間約3000人のボランティアを派遣し医療活動を行なっています。
 毎年派遣されるボランティアは,それぞれの動機をもとに現地へ向かい,自分たちの専門能力と経験を生かし,緊急医療援助(紛争,自然災害等)や長期医療援助(結核対策やストリートチルドレンへの援助)などの活動を行なっています。派遣期間は平均して約6か月-1年以上となります。
 MSFでは,このように現地で医療活動を行なう医療ボランティアを募集しています。事務局では参加希望者のための定期的な説明会も行なっています。
 参加者には2年以上の実務経験と,現地スタッフと不自由なく医療活動に従事できるような英語,またはフランス語による会話能力が必要とされます。
 また,技術的な能力以外にも,精神的な面で必要とされる条件もあります。現地にはさまざまな国のMSFスタッフや,ローカルスタッフたちが,協力しあって仕事をしています。ですから彼らと共存できるような環境適応能力も必要とされます。さらに,不安定な労働下での活動を求められるため,困難な状況下でもストレスをためない精神的な強さが求められます。

自分なりの喜びや楽しみを見出す活動に

 このように医師団参加のための条件は厳しいものではありますが,MSFのミッションは多様ですので,ボランティアは現地で多くのことを吸収することができ,またミッションを重ねるごとに責任あるポストを任されるようになるなど,活動の幅を広げる可能性も大きく開けています。
 日本から活動に参加する医師や看護婦たちは,環境に適応しなくてはならないことに多少不安を感じるかもしれませんが,MSFは寛大で,あらゆる人の参加を受け入れる組織です。派遣者の多くが初めて参加する人たちである一方,任務の重大さからは想像もできないようなフレンドリーな現場の雰囲気の中,すぐに打ち解けてしまう人も多いようです。人生の一期間を苦境に陥っている人のために捧げようという希望を持って参加する人や,旅行が好きで医師団に参加を希望する人など動機はさまざまです。みんな自分なりの喜びや楽しみを見出して活動をしています。
 国境なき医師団の現地活動は,主に医師や看護婦の手で進められています。日本の医療職の皆さんも,ぜひ医師団に参加し,ボランティアとして医療に携わる者しかできないような貴重な経験をしてください。