医学界新聞

3学会・研究会が一堂に会す

「98リハビリテーション合同大会・茨城」開催


 全国地域リハビリテーション研究会(第20回,設立1979年),全国リハビリテーション医療研究大会(第2回,設立1989年),茨城県総合リビリテーションケア学会学術集会(第2回,設立1997年)のリビリテーション(以下リハビリ)関係の3学会・研究会の合同大会が,さる11月6-7日の両日,「98リハビリテーション合同大会・茨城」と銘打ち,茨城県水戸市の水戸市民会館で開催された。本合同大会は,大田仁史大会長(茨城県立医療大学教授)の働きかけにより,会員も多く活動歴も古い全国地域リハビリ研究会の開催に合わせ合同で行なわれた。

充実したプログラムの中から

 本大会で掲げられたメインテーマは「激動,変革,飛躍の時-ノーマライゼーションへの戦略」。大田会長による基調講演は同テーマで行なわれたが,その内容は,思想としてのノーマライゼーションの概念とその歴史的道程をたどり,地域リハビリの定義・活動の枠組みを検証しながら,リハビリのパラダイムと今後の展望を探るというもので,地域リハビリの戦略と実践活動を結びつけようとする意欲的,かつ格調高い講演となった。この他にも,特別講演3題や公開による記念文化講演,シンポジウム,パネルディスカッションと充実したプログラムが企画された。
 また,ポスターによる一般の演題発表は133題。地域リハビリ,病院リハビリ,病院と地域の連携などの分野に分かれて発表されたが,パソコンを駆使したビジュアルなものから手書きまでさまざまあり,今後は写真・図をレイアウトした高度な図説による発表が増えることを予感させた。
 シンポジウム「公的介護保険と地域サービスの結合」(座長=南小倉病院 浜村明徳氏)では,(1)リハビリテーション医療と介護(近森病院 石川誠氏),(2)医療機関の専門職と介護保険(国療長崎病院 宮岡秀子氏),(3)訪問看護と介護保険(訪問看護ステーション住吉 上野桂子氏),(4)介護保険と地域保健活動(高知県室戸保健所吉永智子氏)の4題が発表された。
 それぞれの立場からの,介護保険と地域サービスの結合に関する4名からの意見であったが,「保険とサービスの結合」というテーマながら,介護保険の実施細目がまだ未定という流動的な状況にあることを反映してか,結論的には「結合はなかなか困難で,今後の課題」となった。
 また,一般市民へも公開された記念文化講演「徳川時代の障害者の生活から見たリハビリテーションの視点」は,作家であり,愛知県心身障害者コロニー中央病院長である篠田達明氏が行なったが,氏の長年にわたる研究(というよりほとんど偏執的な資料収集)にもとづくユニークな医学的考察と時代考証がスライドで次々と紹介された。また,日本の歴史の中での病者・障害者の位置づけ,徳川家代々の将軍の病気・障害の実態などを解説し,その驚くべき博識と旺盛な好奇心,資料収集への行動力,そして訥弁の巧みさとユーモアがあいまって,多くの聴衆を魅了した。

メディア機器を地域で活用

 パネルディスカッション「メディア機器を利用した地域リハビリの展開」(座長=旭神経内科病院 旭俊臣氏,茨城県立医療大 中村洋一氏)では,まず最初に中村桂子氏(東医歯大)が「マルチメディアによる在宅テレケアの効果と効用」を口演。テレビ電話を在宅の患者・家族に活用した実践報告を行ない,実用的な取り組みと多角的な評価が注目された。次いで,伊佐地隆氏(茨城県立医療大)は,笠間市保健センターの保健婦らとの共同研究による発表。伊佐地氏らは,ISDN回線を用いたテレビ会議システム(Picture Tel社のSystem 2000)で大学病院と地域の保健センターを結んだ地域リハビリシステムを構築しているが,その共同デモンストレーションを実演した。リハビリの分野における遠隔医療の試みはまだ数少なく,本例は参加者の興味を集めた。また,盛岡茂和氏(NTTマルチメディア推進本部)は,ISDNの普及により,テレビ電話(Phoenix mini)とテレビ会議システム(Phoenix2000HX),SHD(超高精細画像伝送システム)など,医療界におけるマルチメディアの活用の現状を述べるとともに,光ファイバーによるネットワークなどの将来展望を語った。さらに松本義幸氏(厚生省医療技術情報推進室長)は,「遠隔医療・福祉に対する行政の対応」と題し,遠隔医療推進モデル事業の実情を報告。機器の操作性や経済性などの問題点を指摘した。
 本ディスカッションでは,地域ケアにおけるメディア利用が検討されたが,現在急速な進歩を遂げ拡大しつつある分野のためか,時宜に合った企画として注目された。

好評を得た実践的なワークショップ

 ワークショップ「シミュレーション!私のケアプラン」(座長=日医大 竹内孝仁氏,室生内科医院 室生勝氏)では,冒頭にアマチュア劇団『創造市場』によるケアプランのための教材劇「私だって元気になりたい」が上演されたが,演技のリアリティと迫力に会場は一気に引き込まれた。
 その後,この劇で提示された在宅での要介護状況に対して,介護保険ではどのようなケアマネジメントをすべきかについて,檜山由起子氏(常北町社会福祉協議会),高田玲子氏(REC研究会),乙坂佳代氏(港北医療センター訪問看護ステーション)の3名のケアプランナーがそれぞれのアセスメントとケアプランの実際を発表。それに続く討議では,会場からの発言を交え,3名のケアプランの違いを比較検証しながら,ケアマネジメントのあり方が探られ,きわめて具体的な討議が行なわれた。同じケースに対するケアプランがプランナーそれぞれの考えや視点によってかなり違ったものになること,適切なケアプランとは何かなど,さまざまな問題が浮き彫りにされ,刺激的かつ実践的なワークショップとなり,参加者からの好評を得た。
 このような実践的なワークショップが,今後各地の研修会などで盛んになるのではないかと思わせる企画であった。