医学界新聞

よりよいセルフケアへの援助を目的に

第1回日本腎不全看護学会開催


 第1回日本腎不全看護学会が,さる10月30-31日の両日,老久保和雄会長(腎友会岩見沢クリニック)のもと,横浜市のはまぎんホール・ヴィルマーレにて開催された。「21世紀の腎不全看護のパラダイム《統合,調和,自立》」をメインテーマに掲げた同学会は,「腎不全患者の増加と血液透析にかかわる医療費の削減が続く昨今,腎不全患者のケアに携わる看護職の役割は大きく,看護への期待も高まっている。腎不全看護の目的は,治療中の安全を確保すること,および看護職をとりまくヘルスケアチームとともに腎不全患者やその家族が,腎不全を持ちながらも合併症の併発が最小限で充実した生活を送るための,よりよいセルフケアへの援助をすることと考える(学会設立趣旨書より)」として,一昨年6月に,20年続いた「日本腎不全看護研究会」(会長=宇田有希氏)から「日本腎不全看護学会」へ発展させることを表明,学会設立に向けた活動を開始し,本年4月に正式に学会設立(理事長=宇田氏)となった。

多彩なプログラムを企画

 第1回目となった本学会では,招待講演として「ヨーロッパにおける腎不全看護」をJean-Pierre Van Waeleghem氏(腎ケア世界評議会役員)が,また会長講演「慢性血液透析患者の危機プロセスへの臨床的看護実践の経験」を老久保氏が,さらに教育講演(1)として小山充道氏(札幌学院大教授)が「カウンセリングにおける行動変容-特に気づきを中心に」を,教育講演(2)「腎不全看護領域における患者の理解-看護診断とケア」では江川隆子氏(阪大教授)が登壇。最終演題としてはメインテーマに沿ったシンポジウム「21世紀の腎不全看護のパラダイム-統合・調和・自立」(司会=聖路加国際病院 伊野恵子氏,金沢医大透析センター 田村幸子氏)が企画された。本シンポジウムの模様は,次回看護号(明年1月27日付,2323号)で紹介するが,医療経済上も腎不全領域における専門看護婦を必要とする意見がシンポジスト(医師・病院長)から出され,またその養成の背景として「継続的勤務を可能にする能力給の導入,結婚・出産・育児期の環境整備」を指摘し,腎不全看護の方向性が示唆された。
 なお同学会総会では,教育委員会を設置し,設立時からの懸案とされている「腎不全看護認定看護師」制度設立に向けた教育カリキュラムの検討および作成を進めることなどが確認された。