医学界新聞

“温故而知新,可以為師矣”を大会テーマに

第40回日本消化器病学会大会開催


 本紙第2271号(1月5日付)で既報のように,日本消化器病学会は今年12月17日に創立100周年を迎えるが,その記念大会となった第40回日本消化器病学会大会が青木照明会長(東京慈恵会医科大学教授・外科)のもと,さる10月28-30日,東京の国際フォーラムにおいて開催された。
 大会第1日目の「創立100周年記念式典」,「記念国際シンポジウム」に引き続いて,「論語」から引用した故事“温故而知新,可以為師矣”を大会テーマに掲げた2日間の学術集会では,会長講演「酸関連疾患の病態生理と治療の変遷」の他,記念国際シンポジウム4題,特別講演3題((1)わが国における臓器移植の将来と諸問題:日赤医療センター 森岡恭彦氏,(2)闘うがん・闘えない癌:大阪府立成人病センター名誉総長 佐藤武男氏,(3)ゲノム解析計画の進展によるがん研究の新しい展開:国立がんセンター 寺田雅昭氏),招待講演9題,「医学統計フォーラム」,シンポジウム6題,パネルディスカッション13題が企画された。


会長講演
酸関連疾患の病態生理と治療の変遷

 会長講演「酸関連疾患の病態生理と治療の変遷」で青木氏は,「胃における酸は,時として消化性潰瘍や逆流性食道炎などの疾患の形成に関与することがある。20世紀は,酸関連疾患と総称されるこれらの疾患の成因の解明が進み,治療自体も大きく変わってきた時代である」と前置きして,酸関連疾患の成因解明と治療の歴史的変遷を概説した。
 19世紀末に始まった消化性潰瘍に対する胃切除術は,20世紀半ばにその治療の概念を確立し,広範囲胃切除術全盛の時代を迎えた。また,十二指腸潰瘍に対する外科治療としての迷走神経切離術は1940年代に登場し,1970年代に選択的近位迷走神経切離術として完成された。
 一方,薬物治療が十分な治療効果を発揮しなかった時代では,外科治療に重点が置かれていたが,1980年代にヒスタミンH2受容体拮抗薬の登場により一変し,さらに1990年代にプロトンポンプ阻害薬(PPI)が登場して,酸関連疾患に対する初期治療は一層容易になったが,これらの疾患の易再発性が明瞭になり,維持療法の概念が登場している。また,1990年代の大きな変化として,消化性潰瘍に対するHelicobacter pylori(HP)除菌治療の登場があげられるが,青木氏は腹腔鏡手術などの外科的治療に言及するとともに,以下の問題点を指摘してその講演を終えた。
(1)半永続的な酸分泌抑制薬の投与が必要。
 特にPPIの長期投与を余儀なくされる症例が多数存在する
(2)高齢者の呼吸器症状
(3)Barrett食道の発生
(4)噴門部領域癌の増加
(5)HP除菌における逆流性食道炎の発生