医学界新聞

第3回臨床疫学ワークショップ開催


 第3回臨床疫学ワークショップが,オーストラリア・ニューキャッスル大臨床疫学・生物統計学センター(CCEB)と東大医学部国際交流室が共催し,7月19-20日に東大医学部で行なわれた。
 第1回は文献の批判的吟味について,導入から各論まで具体例を交えながらの学習を,第2回は臨床研究のデザインに関して,Research Questionの重要性と作り方から解析計画まで段階的な学習を行なってきた。今回は健康度の測定,健康状態をどう評価するか〔comorbility(併存する慢性疾患)を例として〕に関して,測定方法の開発,スケールの作成,スケールの信頼性と妥当性の評価についての講義と,これら一連の作業に関する実習を行なった。
 ワークショップは,講義形式の導入部分と,6-7人の小グループに分かれて具体的な作業を行なう実習部分の2つより構成され,半日を1ユニットとして4ユニットが行なわれた。
 講義は,小グループ実習のために必要な概念,理論,方法などの基本的な事項を参加者に理解してもらうために,1講義につき40分から1時間かけて実施。講師はCarla Treloar,Kate D'Este, Julie Byles(ニューキャッスル大),福原俊一,ジョセフ・グリーン(東大),浅井泰博(自治医大),大生定義(聖路加国際病院)が努めた。なお,次回ワークショップは明年5月22-23日に東京で実施する予定。
◆問合せ先:〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学医学部国際交流室
 FAX(03)5803-1817
 E-mail:jgreen@twics.com(担当:ジョセフ・グリーン)


臨床疫学ワークショップに参加して

南 学(東大・放射線科) 

 オーストラリア・ニューキャッスル大臨床疫学・生物統計学センターと東大の共同開催によるワークショップが,7月19-20日の両日行なわれた。参加者は内科,小児科,外科,放射線科(私のこと)などの医師,看護婦,保健婦,公衆衛生の大学院生,芸術家など,さまざまな分野から集まり,総勢26名。オーストラリアからは,臨床疫学専門のM.D.,生物統計学専門家のPh.D.,健康社会学専門のPh.D.と,計3名の講師が来日された。
 今回のテーマは,疫学研究の際の測定に用いる道具,例えば質問用紙等の作成と信頼度の評価の仕方についてであった。
 私自身,医師になりたての頃に臨床判断分析のことを知って以来,臨床疫学にずっと関心を抱き,現在,臨床疫学通信教育プログラムの大学院1年生として勉強しており,その講師の方々を知っておきたいということもあって参加させていただいた。私の学生時代(今から15年以上も前)には臨床疫学の講義はなく,公衆衛生の時間にいわゆる疫学のことを少し学んだだけであったため,臨床疫学者・生物統計学者が,実際にどのようなものの考え方をし,どのような技能・知識を有し,物事をどのように処理していくのかが非常に興味深かった。
 ワークショップでは,講義のhandoutは非常によくできており,講義自体も目標がしっかりしていて,わかりやすい英語で進められた。ただ,討論の段階では,参加者のほとんどが英語で討論することに慣れておらず,時間ばかりかかってしまい,今後こうした外人講師を含めたワークショップをどのように進めていくかが課題と思われた。このワークショップはこれからも毎年開催される予定とのことであるが,個人的には公衆衛生学的なテーマより,もう少し個人レベルでの臨床疫学の応用,例えば先にあげた臨床判断分析や批判的論文の読み方などにテーマを絞って,その実践的な応用について訓練してもらえるとありがたく,また参加者も増えるのではないかと思われる。
 いずれにせよこの2日間は,普段あまりつきあいのない方々のいろいろな考え方を知ることができ,また,オーストラリアからの講師の方々とも面識ができ,非常に有意義であった。これでまた決意新たに通信講座の勉強が進められる気分になれそうである(日曜日と祭日をつぶして家族には非常に申し訳なかったが)。