医学界新聞

腸管の病態生理・治療に関する問題を
基礎・臨床の双方から国際的規模で討議する初の会議

●国際シンポジウム
「腸管障害と成長因子・栄養素」-開催迫る


   国際シンポジウム「腸管障害と成長因子・栄養素」(International Symposium“Growth Factor and Nutrients in Intestinal Health and Disease”)が,岡田正会長(阪大医学部教授・小児外科)のもとで,きたる10月31日-11月3日の4日間,大阪市のリーガロイヤホテルにおいて開催される。

人工栄養法の導入によってBTが注目を集める

 最近30年間における非経口栄養法(静脈・経腸栄養法)の長足の進歩とともに,腸管不全(腸管大量切除,腸管広汎機能障害)の長期生存が可能となり,多くの消化器疾患の予後が著しく好転したことは衆知の事実である。
 しかしながら,一方ではこれらの人工栄養法の導入が生体にとってさまざまな不利益(腸管粘膜の萎縮,肝障害,敗血症,多臓器障害など)を起こすことが知られ,その機作の1つとしてBacterial Translocation(BT)が注目を集めている。
 さらに近年の生理化学,分子生物学,分子遺伝学の進歩はさまざまな成長因子(成長ホルモン,IGF-1,GLP-2,EGF,IL-11)や栄養素(グルタミン,アスパラギン,短鎖脂肪酸)の存在を明らかにして,これらがBTの制御効果を示し,また腸管粘膜の再生肥大を促進することが示されている。また,これらの腸管不全に対する最終治療法としての腸管移植が免疫抑制剤の開発とともに新たな治療選択肢として加わり,消化管生理・病態研究の面からも新たなる発展・展開が期待されている。

腸管の病態生理・治療の問題を基礎・臨床の立場から初めて検討

 岡田会長によれば,今回企画したこのシンポジウムは多くの国際的に著名なこの領域の研究者の参加を得て,これらのさまざまな腸管の病態生理・治療に関する問題を,今回初めて基礎・臨床双方の立場から国際的規模で討議し,この領域の新たな発展に資するとともに,現時点での最先端の知見を明らかにすることを目的としている。
 なお,これに関連した国際シンポジウムは,1983年に高知(高知医大 小越章平氏)において,また1988年には大阪(阪大 岡田氏)において持たれ,いずれも500-600名の出席者を得て盛大に開催された。今回のシンポジウムは,テーマを「腸管」に絞り,この領域の研究に携わる多くの基礎・臨床の研究者の関心を強く引く内容である。
 同国際シンポジウムのプログラムは以下の通り。

●特別講演者
(1)Douglas W. Wilmore氏(Department of Surgery, Harvard Medical School ; USA)
(2)岸本忠三(阪大学長)

●主な招待者
 (シンポジスト,司会,講演者)

(1)Daniel J. Drucker, MD.(Department of Medicine, Toronto Hospital-General Division; Canada)
(2)Oliver Goulet, MD.(Service de Gastroenterologie et Nutrition, Hospital Necker-Enfants-Malades; France)
(3)Jay L. Gosfeld, MD.(Department of Surgery, JW Riley Hospital for Children; USA)
(4)P. Brobech Mortensen, MD.(Department of Medicine, Rigshospitalet; Denmark)
(5)Josef Neu, MD.(Department of Pediatrics, School of Medicine, University of Florida; USA)
(6)J. Marc Rhoads, MD.(Department of Pediatrics, School of Medicine, University of North Carolina; USA)
(7)Peter B. Soeters, MD.(Department of Surgery, Academial Hospital Maastricht; The Netherlands)
(8)藤堂省(北大第1外科)
(9)John A. Walker-Smith, MD.(Department of Pediatric Gastroenterology, Royal Free Hospital; UK)
(10)Nicholas A. Wright, MD.(Department of Histopathology, Hammersmith Hospital, Royal Postgraduate Medical School)

●シンポジウムトピックス
(1)腸管粘膜発達機構
(2)腸管関連リンパ組織
(3)バクテリアル・トランスロケーション
(4)腸管虚血・再灌流
(5)短腸症候群
(6)炎症性腸疾患
(7)TPN関連性肝機能障害
(8)腸管成長因子
(9)グルタミン,食物繊維
(10)腸管移植
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