医学界新聞

クリティカルパス入門セミナー開催

ケアの質向上とチーム医療の実現をめざして


 さる8月3日,東京・早稲田大学井深大ホールにおいて,ドクターズオピニオン(代表=立川幸治氏)主催による,クリニカルマネジメントフォーラム「クリティカルパス入門セミナー:ケアの質向上とチーム医療の実現をめざして」が開催された。

CPのヴァリアントをどう考えるか

 セミナーでは,「クリティカルパス」を編み出したCCM(The Center for Case Management)共同主催者であるカスリーン・バウアー氏(写真)が来日し,クリティカルパス(以下,CP)の歴史と発展について1時間半にわたる講演を行なった。
 バウアー氏は,CPを理解する上で欠かせないアメリカのヘルスケアシステムにおける診療報酬支払制度を概説。医療費支払いのリスクが,今までは消費者である患者側にあったが,ケアの供給者である医療機関側に移行したと指摘。そのリスクが医療機関にとって高くなるほど,ケアの効果的なマネジメントが必要になるという背景から,CPが開発された歴史を述べた。
 特に氏が重点を置いたのは,CP実施の際に生ずるバリアンス(変化要因)に対する考え方であった。「マネジメントとはバリアンスをなくすことではない」との考え方を提示し,「バリアンスの発生は,医療の質向上に役立てるべきもので,その大きなチャンスになりえるもの」とした。
 最後にバウアー氏は,「CPは1つのデータに過ぎず,中立的なもの。医療のよしあしを決定するものではない」と強調し,講演を結んだ。

ケアの「標準化」

 続いて,日本におけるCPの実践について,阿部俊子氏(群馬大)が概説。氏は,CPのめざすところである「ケアの標準化」が理解されていないことを指摘し,「CPはケアの均一化ではなく,ケアのボトムアップと考えるべき」と述べ,CPに関してよく聞かれる「ケアが同質になるのでは」「医療への介入となるのでは」などの懸念に対する解答を示した。その上で,パス法の基本原理と利点,作成法などを明らかにしていく中から,職場でのCP導入に際して,「目的を明確に提示することが成功の鍵」とし,その目的に(1)インフォームドコンセン,(2)業務の整理,(3)在院日数の短縮,(4)業務の効率化などをあげた。
 その他,笹鹿美帆子氏(前筑波医療短大)は,東京都済生会中央病院におけるCP導入の経験から,その実践の過程を報告。
 最後に主催者側である立川氏が登壇し,本セミナー開催にあたり「アメリカ医療を大きく変えたマネージドケアの波が,日本にも押し寄せてくる」と述べ,「そのためにも,今医療に何が必要かを見極める必要がある」と,結びの言葉とした。
 一方,本セミナーは大阪でも開催され,多くの参加者を集めた。ここでは講演が終了した後,会場で参加者とともにある症例を用いてCPを作成するプログラムが組まれるなど,充実した内容となった。