BOOK REVIEW

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総合的な診療能力の習得のために

レジデント臨床基本技能イラストレイテッド　小泉俊三　編集

《書　評》名尾朋子（山口大附属病院研修医）

　今春，医学書院から『レジデント臨床基本技能イラストレイテッド』が出版された。これは総合診療誌「JIM」に，研修医のための手技のシリーズとして連載されたものである。初期研修では総合的な診療能力の習得が求められるが，本書はその一助となる技術書である。このたび本書を読む機会をいただき，研修中の一研修医として筆をとらせていただいた。
　患者の診察法や基本的手技を扱った本は数多く出版されているが，本書には類書にない特徴がいくつもある。本書は3章からなり，まず第1章には基本的診察法について示されている。技術の習得に走りがちな研修医に，医療の基本は診察であることを教えてくれる章となっている。第2章には基本的検査・手技が，第3章には外科・救急手技が示されている。記載された内容は基礎中の基礎であり，われわれがむしろ蔑ろにしてしまう，あるいは疑問に思っても，羞恥心から確認できないようなものも数多い。

教科書では学べない知識

　またイラストレイテッドの名の通り，多くの図とともに微に入り細をうがつ解説が付してあり，わかりやすく手技の習得および理解が可能となっている。特に気に入ったのは「後輩へのプレゼント」である。教科書を読むだけでは習得できない，ちょっとした診療のこつ，陥りやすい間違いや失敗，これらは実際に経験を積まなければ，決して得ることのできないものである。それが各項目ごとに紹介してあり，今後の診察において非常に役立つと思われる。臨床によく即しており，初期研修中のわれわれには使いやすく，また役に立つ本であろう。
　本書の冒頭には各検査手技に対する自己評価表がある。これに書き込みながら，自分はどれだけ成長しただろうと考えると，身の引き締まる思いがするのではないだろうか。
B5・頁180　定価（本体4,500円＋税）　医学書院